誰も反応出来なかったし、状況を理解出来なかった。
グシャだか、グチュとか、不可解な音が前からして誰かの「な、」と言う声が狭い車内に響く。
「あらまあ」
凌久君が運転席を見て目を丸くしているのが不釣り合いに見え、そして渚君や夏波ちゃん、鉄将君が即座に動き出そうとした所、
「お止め下さい皆様」
当の左耳に小刀のナイフを刺されたカールさんが何故だか止めた。
「おいアンタ!」
「だから動かないで下さい。綴様以外は命の保証は出来ませんよ」
渚君の声掛けをカールさんは一蹴。
私はへ、な、うん?と1人で訳が分からなくなっている最中も、カールさんの耳から血が滴り落ちる。
血を見ながらそっか惣倉君がやったのかと理解し、隣を見ようとしてーーー見れなかった。
生物的恐怖が勝ってしまった。
ぱっと前を見て、奥深いアイアンブルーの瞳と勝ち合う。
笑っていた。
「綴様。惣倉がどんな家かお伝えしていませんでしたね」
「は、い」
唐突にカールさんが切り出す。
怪我していても、相変わらず運転に乱れがない。
「惣倉はある事を、気が遠くなる程研究していたんですが、私はそれにいたく共感しました」
「…?」
話が見えないし、ひりついた空気は膨れ上がるばかり。
「だからお手伝いとして、影刀様をお育てさせて頂いているんです」



