『綴ちゃん』
『埜々ちゃん、後は任せるけどもし何かあったら、』
『お願いがあります』
普段なら人の話しを遮るなんてしないのに、余程焦っていたのか埜々ちゃんは、胸の前で手を握り合わせて私を見上げる。
そして、
『鉄将君も連れて行って下さい』
『え』
予期しないお願いを口にした。
当の鉄将君もえって顔をしているけれど。一体?
『私さっき言いましたよね。綴ちゃんの力になると』
『うん』
熱いコーヒーと共に熱い想いを伝えてくれたの埜々ちゃんの事は忘れていないけれど、鉄将君を連れて行くのと、どう言う関係があるんだ?
『今回は私自身のお力では綴ちゃんの力になれないし、足手纏いになるので付いていけませんが、』
一旦言葉を区切る。
強い眼差しに、私は黙って話を聞いた。
『鉄将君ならお力になれると思うんです。だからどうか連れて行って下さい』
『…』
ーーー埜々ちゃんもきっと自分が行けたら行きたいだろうに。
自分が今出来る限り協力出来る事と、どう動けば鉄将君の事も守れるのか考えた結果なのだろう。
『埜々ちゃん…』
埜々ちゃんの思いに感動していれば『の、埜々…あのちょっと待っ、』と情けない声が聞こえるが、埜々ちゃんは振り向かなかった。
しかも、
『鉄将君』
『は、はい!』
冷たさを言葉に詰め過ぎて、此方までピキーンと凍りそうな声に震える。



