序章
…雨が…降っていた。…雪が…降り積もっていた。幻聴であると信じたいが、ザクザクと雪の鳴る音がする。
(ああ、俺は死んだんだ。)
そう思った。が、雨の音が聞こえる。一瞬だけ、明るい世界に入った気がした。女神様のような人が見えた気がする。
(ああ、どこまで妄想すれば俺は気が済むんだ。幻覚まで見えるようになったのか。)
そう、思わせるほど綺麗な場所だった。が、救急車の音が聞こえる。なぜ救急車かだって?決まっているだろう。俺はもう、死んだんだ。ここで幸せに、暮らしていく。
一、俺を待っていたものは
死因…は、まあ話さなくていいか。そのうち話すけどな。
死んで、この天国のような場所で俺は目覚めた。最初は眩しすぎた。光が治ってきて、周りを見ると集落のような物があった。そこに行って色々な情報を得た。まとめると、転生の女神様と、ここに残った人々を見守る女神様がいるらしい。ヨシ、だいぶ有益な情報だ。転生の女神の説明を一応しておこう。転生したいと望んだ人々、つまり、もう一度あの人生のようなものに戻りたい人々だな。そのような人々が何に生まれ変わりたいか望んで、生まれ変われるらしい。凄いな。なんか。集落人々は、優しくて、俺の質問に答えてくれた。俺は、ここで暮らしていく決心をした。いや、しようとしたところに、だ。例の転生の女神様がお越しになられた。集落の人々の方を向くと、その人たちは、頷きあっていた。転生の女神様は、俺に手を差しのべてくれながら、こう言った。
「あなたをずっと待っていました。河松嶺一さん。あなたは転生すべき人物なのです」
二、俺が転生すべきものは
嘘だろ。俺は高校生だぞ。何故だ。
「失礼ながら、何故俺が転生すべき人物なのでしょうか」
と、聞いた。生きてる間にいいことをした記憶がない。迷惑になることしかしていないのに、と思ったからだった。転生の女神様、葉奈瑞樹様はこう言った。
「ここにいる皆も、私は説得しましたが、絶対ここに残るという人物です。どうしてもというのならここに残っても構いません。ですが、あなたの人生は不遇すぎました。だからもう一度だけ、やり直したいとは思いませんか?」
確かに、不遇かどうかは置いといて、死んだ後はこの人生、やり直せれたらと思っていた。転生するものにもよるだろうか。何に転生すれば良いのか聞いてみることにした。
「俺は何に転生すればよろしいのでしょう」
「人間です」
「は?」
あり得ない。何故だ。こういうのは動物とかじゃないのか
「その前に、私としたことが…死因を聞き忘れていました。聞いてもよろしいですか?」
まあ、そのうち話すつもりだったからもう話していいか。
「…はい」
と、渋々返事をした。
三、俺の死因は
俺の死因っつてもな…何から話すか…その日の朝から全部話すか。面倒だけど。
朝、俺は六時に起きた。学校があったからなあ。その日は雲ひとつない青空だった。つまり、快晴だった。自転車で学校に行って、いつも通り過ごした。友達と過ごし、友達と弁当を食べ、友達と下校した。それから塾にひとりで行き、ひとりで家に帰るつもりだった。塾は何時からでも大丈夫なタイプで、九時半には絶対家に帰らなければならない。俺は、ゆっくり歩いて通っていた。まあ、遠くもないし、近くもないという距離だったから歩きで来た。そのまま、塾でもいつも通り。ひとりで勉強をし、ひとりで歩いて帰った。いや、帰るつもりだった。俺は九時半まで残っていた。帰ろうと思い、外に出たら雨が降っている。少し雪も混ざっていた。いつも通りゆっくり帰っていると、後ろに人の気配がした。勢いよく振り返ってみると、誰もいない。また、ゆっくり歩き始める。人の気配がする。少し速く歩く。足音が聞こえた。振り返ると、バッドを振りかぶったおじさんがいた。避けようとしたが、足がすくんで動かなかった。そのまま、頭にバッドが当たった。倒れた。まだ少し目が見えていた。雪が降り始めた。まだ歩けそうだ。歩いた。歩いた。そうして、倒れた。雪と積もっていた雪は俺の幻覚だった。つまり、俺は死んだ。死因はバットで殴られた後歩いたから。(これが噂に聞く通り魔かあ)。と思った。
「まあ、こんな感じです」
「ありがとうございます!やはり転生すべき人でした!」
と、喜んだように瑞樹様は言った。なんでだよ!と言いたくなったがやめた。あの時見えた女神様のような人は本当に女神様で、瑞樹様だったということか、と納得がいった。次は転生して何をすれば良いのか聞いてみよう。
四、俺が転生してするべきことは
「また大変失礼ながら俺は転生して何をすれば…?」
と、恐る恐る聞いてみたら、どこかのドラマや漫画や小説にありそうなことを言った。
「ああ、それを言っていませんでしたね。すみません。あなたは未練をいくつか残しています。未練を残している人はたいてい転生しています。そして、すべての未練を成し遂げてここに帰ってきた人も多いのです。つまり、未練解消ですね。」
「未練…?」
「ええ、心当たりはありませんか?」
と、今度は俺が問われた。心当たりなんてないぞ?
「私でも未練の数と内容はわからないのです。不思議ですよね。しかも、あなたの場合、未練が多すぎる。」
未練とは、この後に聞いた内容によると、第一回目の人生でやろうと思っていたけれどできなかったことや、ずっと心の奥にしまっておきたくて、言うかどうか迷っていたもの(これは好きな人に告白とかそういう系だな。)などのことをまとめて未練というらしい。おいおい、改めて心当たりないぞ。
「行けばわかります。私は説明をやり終えました。後はあなた次第です」
「…俺次第」
モヤモヤ感はあった。しかし、零歳からやり直しとなると面倒だし、この年齢のまま転生しても説明に困るだけだった。だが、母が悲しまないでよくなるのならいいのかもしれない。(親不孝人だったからなあ)
「転生します」
と勇気を出し、決心し、言ったら瑞樹様はとても嬉しそうだった。
「ありがとうございます。それでは行ってらっしゃいませ。」
の後に
「零歳からですよ」
とふふと笑いながら言った。言うの遅くないか
そして俺の転生、未練解消物語が始まるのであった。
…雨が…降っていた。…雪が…降り積もっていた。幻聴であると信じたいが、ザクザクと雪の鳴る音がする。
(ああ、俺は死んだんだ。)
そう思った。が、雨の音が聞こえる。一瞬だけ、明るい世界に入った気がした。女神様のような人が見えた気がする。
(ああ、どこまで妄想すれば俺は気が済むんだ。幻覚まで見えるようになったのか。)
そう、思わせるほど綺麗な場所だった。が、救急車の音が聞こえる。なぜ救急車かだって?決まっているだろう。俺はもう、死んだんだ。ここで幸せに、暮らしていく。
一、俺を待っていたものは
死因…は、まあ話さなくていいか。そのうち話すけどな。
死んで、この天国のような場所で俺は目覚めた。最初は眩しすぎた。光が治ってきて、周りを見ると集落のような物があった。そこに行って色々な情報を得た。まとめると、転生の女神様と、ここに残った人々を見守る女神様がいるらしい。ヨシ、だいぶ有益な情報だ。転生の女神の説明を一応しておこう。転生したいと望んだ人々、つまり、もう一度あの人生のようなものに戻りたい人々だな。そのような人々が何に生まれ変わりたいか望んで、生まれ変われるらしい。凄いな。なんか。集落人々は、優しくて、俺の質問に答えてくれた。俺は、ここで暮らしていく決心をした。いや、しようとしたところに、だ。例の転生の女神様がお越しになられた。集落の人々の方を向くと、その人たちは、頷きあっていた。転生の女神様は、俺に手を差しのべてくれながら、こう言った。
「あなたをずっと待っていました。河松嶺一さん。あなたは転生すべき人物なのです」
二、俺が転生すべきものは
嘘だろ。俺は高校生だぞ。何故だ。
「失礼ながら、何故俺が転生すべき人物なのでしょうか」
と、聞いた。生きてる間にいいことをした記憶がない。迷惑になることしかしていないのに、と思ったからだった。転生の女神様、葉奈瑞樹様はこう言った。
「ここにいる皆も、私は説得しましたが、絶対ここに残るという人物です。どうしてもというのならここに残っても構いません。ですが、あなたの人生は不遇すぎました。だからもう一度だけ、やり直したいとは思いませんか?」
確かに、不遇かどうかは置いといて、死んだ後はこの人生、やり直せれたらと思っていた。転生するものにもよるだろうか。何に転生すれば良いのか聞いてみることにした。
「俺は何に転生すればよろしいのでしょう」
「人間です」
「は?」
あり得ない。何故だ。こういうのは動物とかじゃないのか
「その前に、私としたことが…死因を聞き忘れていました。聞いてもよろしいですか?」
まあ、そのうち話すつもりだったからもう話していいか。
「…はい」
と、渋々返事をした。
三、俺の死因は
俺の死因っつてもな…何から話すか…その日の朝から全部話すか。面倒だけど。
朝、俺は六時に起きた。学校があったからなあ。その日は雲ひとつない青空だった。つまり、快晴だった。自転車で学校に行って、いつも通り過ごした。友達と過ごし、友達と弁当を食べ、友達と下校した。それから塾にひとりで行き、ひとりで家に帰るつもりだった。塾は何時からでも大丈夫なタイプで、九時半には絶対家に帰らなければならない。俺は、ゆっくり歩いて通っていた。まあ、遠くもないし、近くもないという距離だったから歩きで来た。そのまま、塾でもいつも通り。ひとりで勉強をし、ひとりで歩いて帰った。いや、帰るつもりだった。俺は九時半まで残っていた。帰ろうと思い、外に出たら雨が降っている。少し雪も混ざっていた。いつも通りゆっくり帰っていると、後ろに人の気配がした。勢いよく振り返ってみると、誰もいない。また、ゆっくり歩き始める。人の気配がする。少し速く歩く。足音が聞こえた。振り返ると、バッドを振りかぶったおじさんがいた。避けようとしたが、足がすくんで動かなかった。そのまま、頭にバッドが当たった。倒れた。まだ少し目が見えていた。雪が降り始めた。まだ歩けそうだ。歩いた。歩いた。そうして、倒れた。雪と積もっていた雪は俺の幻覚だった。つまり、俺は死んだ。死因はバットで殴られた後歩いたから。(これが噂に聞く通り魔かあ)。と思った。
「まあ、こんな感じです」
「ありがとうございます!やはり転生すべき人でした!」
と、喜んだように瑞樹様は言った。なんでだよ!と言いたくなったがやめた。あの時見えた女神様のような人は本当に女神様で、瑞樹様だったということか、と納得がいった。次は転生して何をすれば良いのか聞いてみよう。
四、俺が転生してするべきことは
「また大変失礼ながら俺は転生して何をすれば…?」
と、恐る恐る聞いてみたら、どこかのドラマや漫画や小説にありそうなことを言った。
「ああ、それを言っていませんでしたね。すみません。あなたは未練をいくつか残しています。未練を残している人はたいてい転生しています。そして、すべての未練を成し遂げてここに帰ってきた人も多いのです。つまり、未練解消ですね。」
「未練…?」
「ええ、心当たりはありませんか?」
と、今度は俺が問われた。心当たりなんてないぞ?
「私でも未練の数と内容はわからないのです。不思議ですよね。しかも、あなたの場合、未練が多すぎる。」
未練とは、この後に聞いた内容によると、第一回目の人生でやろうと思っていたけれどできなかったことや、ずっと心の奥にしまっておきたくて、言うかどうか迷っていたもの(これは好きな人に告白とかそういう系だな。)などのことをまとめて未練というらしい。おいおい、改めて心当たりないぞ。
「行けばわかります。私は説明をやり終えました。後はあなた次第です」
「…俺次第」
モヤモヤ感はあった。しかし、零歳からやり直しとなると面倒だし、この年齢のまま転生しても説明に困るだけだった。だが、母が悲しまないでよくなるのならいいのかもしれない。(親不孝人だったからなあ)
「転生します」
と勇気を出し、決心し、言ったら瑞樹様はとても嬉しそうだった。
「ありがとうございます。それでは行ってらっしゃいませ。」
の後に
「零歳からですよ」
とふふと笑いながら言った。言うの遅くないか
そして俺の転生、未練解消物語が始まるのであった。


