「なぁ、その能力を活かしてみないか?」
活かす…って
「どうやって?」
わかってる。
わかってるのに、聞いてしまう。
ただ、信じたくない。
「簡単なことだ。ケンカの時に能力を使って隙をつくるだけだ。その後は普通に攻撃すればいい。」
やっぱり。
無意識に俯いてしまう。
ここはNoxのアジトだ。
そこで能力を活かすとすればそれしか無い。
ただ、能力を使っているのが私だとバレるのが怖い。
それが広まったら、またみんな離れていく気がして。
もしかしたら、変な噂も立てられるかもしれない。
そしたら、こあちゃんも離れていくかもしれない。
それだけは…
「いやだ。」
気付いたら、そんな言葉を口にしていた。
ケンカができるのは最悪バレてもいい。
こあちゃんはそんなことで離れて行かない。
でも能力に関しては別だ。
「大丈夫。空羽ならきっと。」
真上から夜神くんの優しい声が聞こえた。
驚いて顔を上げる。
彼は優しい瞳で笑いかけてくれる。
咄嗟に視線を逸らす。
何が大丈夫なんだろうか。
でも、「大丈夫」って聞いたときなぜか本当に大丈夫な気がした。
夜神くんの言葉はどういうことかよくわからない。
でも、そこに真っ直ぐな思いがのせられているのはわかる。
信じてみたい。夜神くんの言葉だから。
「……やって、みる。」
怖いのは変わりない。
けど、信じる。
夜神くんがいるんだ。
大丈夫。

