「空羽…ちゃん?今のは…?」
水渡田先輩が立ち止まって聞いてくる。
あぁ、最悪だ…。
私は今、特殊能力を使ってしまったのだ。
私の特殊能力は、高速移動。
使っている間は周りがスローモーションになるけど、周りから見たらほとんど瞬間移動に見えるらしい。
このテストで発動しないように気をつけてたのに…。
やってしまった。
小さい頃、これでイタズラをして、怖がらせちゃったことがある。
その後、みんなから距離を置かれてしまった。
だから隠してたのに、本能的にでてしまった。
「空羽ちゃん…?」
どうしよう…。
どう誤魔化そう…。
「お前の特殊能力、だろ?」
夜神くんが近寄ってきて、確信のこもった瞳で聞いてくる。
「な、なんのこと〜?」
もう何もなかったことにしておこう。
「高速移動、だろ?」
夜神くんがさらに聞いてくる。
どうしてわかるの…?
みんな瞬間移動だって言うのに、夜神くんは高速移動だ、って言った。
ぴったり言い当てられて恐怖をおぼえる。
「俺、昔見たことがあるんだ。その時は何かの見間違いかと思った。でも、お前の両親に聞いたら、あっさり教えてくれた。空羽の特殊能力だって。」
う、そ…。
「私が見せたのは1回だけなバズ…!その時は夜神海月なんて子いなかったのに!」
「やっぱりそうなんだな。」
あっ…、
動揺しすぎて心の声が漏れてしまった。
「昔、俺が不良に絡まれてるときお前が助けてくれた。その時に見た。」
それを聞いた瞬間、当時の記憶がフラッシュバックする。
一人の男の子を背に、戦っているところが。
確かに…、あの時咄嗟に使ってしまった。
まさかそんなに昔のことを覚えているなんて…。

