夜影の空気にも、少しだけ慣れてきた。
無口で冷たいかと思ってたメンバーも、話してみれば意外と仲間想いで、バカみたいなことで笑い合ってる。

「お前、意外とやれてんじゃん」

そう言って笑ったのは、駿真の右腕・司。
ちょっと口が悪いけど、誰よりも周りを見てる人。

「そろそろ本格的に走ってもいいんじゃねぇの? 駿真」

「……ああ。今の悠菜なら、背中預けられる」

駿真のその言葉に、少しだけ心臓が跳ねた。
嬉しいとか、そういうんじゃない――たぶん。でも、ちゃんと聞こえた。

その日の夜、初めて本気のチーム走行に加わった。
風を切って、列になって走る感覚は、何にも代えられないくらい気持ちよかった。

「悪くねぇだろ?」
「……うん。最っ高」

ヘルメット越しに笑いかけた私に、駿真が少しだけ目を細めた。

だけど――その夜の帰り道。
夜の港で、バイクを止めた瞬間。

「よう、夜影。最近いい気になってんじゃねぇの?」

数台のバイクが現れ、囲まれる。

「……牙狼(がろう)」

駿真の顔が険しくなった。敵対チーム。その中でも特にヤバい連中。

「悠菜、後ろにいろ」
「……無理。もう、背中預けられるんでしょ?」

彼の目が、一瞬だけ揺れた。

「……行くぞ、下手すんなよ」
「言われなくても!」

私たちは再び、背中を合わせて構えた。



誰かのために戦うって、こんなに熱くなれるんだ。
気づけば私は、ただの“新入り”じゃなくなってた。