「ゼアルに、会わせてくれるんですよね!?」
嬉しくて瞼に涙を浮かべながら言う私を見ると、カミーユはゆっくりと頷いた。
「ああ、約束しよう。お互いの準備ができてから、ね」
それから小さく咳払いをして、どこか笑いを抑えているような声で話し出す。
「とりあえず君は、生活習慣を元通りにしようか? ちゃんと食べて、外の空気も吸って――部屋の換気も忘れずに」
「う……」
私の顔が、一気に熱くなった。
だって、今の私はボサボサの髪にヨレた部屋着、部屋の中は脱ぎ捨てた服と空き袋の山。
絶対、目に入ってた。
「な、なんでそこまで……」
「ん? だってコウモリとして入った時から見えてたもの。
心身は繋がってる。まずは自分を労わることから、だよ」
「は、はい……。ありがとうございます! カミーユさん!」
「ふふ、やっと笑顔が見えたね。その調子で、ゼアルにあった時もとびきりの笑顔を見せてあげて。
それと、僕のことは呼び捨てで構わない。敬語はちょっと苦手でね」
「わ、わかった……」
戸惑いながら頷くと、カミーユは安心したように頷く。
「よしよし、それじゃあ僕は帰るからね。明日か明後日にまた来るよ。
あ、ちゃんと玄関からね」
カミーユが帰ったあと、私は言葉では言い表せない不思議な気持ちになっていた。
ゼアルは私を嫌いになっていなかった。それだけで、私にはじゅうぶんすぎる特効薬だ。
「よしっ!まずは片付けよう!」
体の奥からエネルギーが溢れてきた私は、窓を開けてすぐに掃除に取りかかった。
2日後、すっかり綺麗になった自宅に、宣言通りまたカミーユが訪ねてきた。相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。
「やぁ、リィスちゃん。ちゃんと生活習慣を戻したんだね」
「ど、どうも……」
ちゃん付けで呼ばれたことが恥ずかしくて、目を合わせられなかった。
それをわかっているのか、カミーユは茶化すような笑みを浮かべる。。
「ちゃんとゼアルと君の間を行き来して、お互いの気持ちを伝えてきたよ」
「ゼ、ゼアルは何て言ってたの……?」
「"俺にリィスに会う資格があるんだろうか"だって。それでも、だいぶ前向きに考えられるようになったけど。変なところで頑固なんだよね、あいつ」
カミーユが呆れたように肩をすくめる。
「まだ、会うのは厳しい?」
「五分五分、と言ったところかな。家の中に入れてくれるかもしれないし、また閉じこもってしまうかもしれない」
「でも、1回会わなきゃ……」
「僕としては、もう少し待った方がいいと思うよ。焦ってまた振り出しに戻りたくないだろう?」
「うん……」
カミーユの言う通りだ。せっかくゼアルも前向きに考えてきてくれているのに、ここで追い詰めるようなことをするわけにはいかない。
「あと、どれぐらい待ったらいいかな?」
「少なくとも1日はいる。まだ心がグラグラしてるんだ。
でも、君とゼアルが会わないと解決しないからね……」
「ゼアルが、会いたい、みたいなこと言い出したら教えてくれる?それまで待つから……」
「もちろんさ。
ゼアルも贅沢だよね……こんな可愛い子、待たせるなんてさあ」
カミーユの言葉に顔が熱くなる。冗談のつもりでも、可愛いと言われて嬉しくならないはずがない。
「じゃあ、僕は帰るから……しっかり準備しとくんだよ?」
「うん!」
元気よく答えた私を見てカミーユは笑顔を浮かべると、手を振りながら去っていった。
そして翌朝、髪の手入れをしていた時に、カミーユがやってきた。
どこか晴れ晴れしい顔をしていて、期待してしまう。
「ふふ、いつでも行けるって感じだね」
「せめて、準備だけはしておこうかと。そ、それで……」
詰め寄るように言った私に、カミーユは待ってましたとばかりに、にっこりと微笑んだ。
「お待たせ。さぁ、ゼアルに会いに行こうか……」
嬉しくて瞼に涙を浮かべながら言う私を見ると、カミーユはゆっくりと頷いた。
「ああ、約束しよう。お互いの準備ができてから、ね」
それから小さく咳払いをして、どこか笑いを抑えているような声で話し出す。
「とりあえず君は、生活習慣を元通りにしようか? ちゃんと食べて、外の空気も吸って――部屋の換気も忘れずに」
「う……」
私の顔が、一気に熱くなった。
だって、今の私はボサボサの髪にヨレた部屋着、部屋の中は脱ぎ捨てた服と空き袋の山。
絶対、目に入ってた。
「な、なんでそこまで……」
「ん? だってコウモリとして入った時から見えてたもの。
心身は繋がってる。まずは自分を労わることから、だよ」
「は、はい……。ありがとうございます! カミーユさん!」
「ふふ、やっと笑顔が見えたね。その調子で、ゼアルにあった時もとびきりの笑顔を見せてあげて。
それと、僕のことは呼び捨てで構わない。敬語はちょっと苦手でね」
「わ、わかった……」
戸惑いながら頷くと、カミーユは安心したように頷く。
「よしよし、それじゃあ僕は帰るからね。明日か明後日にまた来るよ。
あ、ちゃんと玄関からね」
カミーユが帰ったあと、私は言葉では言い表せない不思議な気持ちになっていた。
ゼアルは私を嫌いになっていなかった。それだけで、私にはじゅうぶんすぎる特効薬だ。
「よしっ!まずは片付けよう!」
体の奥からエネルギーが溢れてきた私は、窓を開けてすぐに掃除に取りかかった。
2日後、すっかり綺麗になった自宅に、宣言通りまたカミーユが訪ねてきた。相変わらず穏やかな笑みを浮かべている。
「やぁ、リィスちゃん。ちゃんと生活習慣を戻したんだね」
「ど、どうも……」
ちゃん付けで呼ばれたことが恥ずかしくて、目を合わせられなかった。
それをわかっているのか、カミーユは茶化すような笑みを浮かべる。。
「ちゃんとゼアルと君の間を行き来して、お互いの気持ちを伝えてきたよ」
「ゼ、ゼアルは何て言ってたの……?」
「"俺にリィスに会う資格があるんだろうか"だって。それでも、だいぶ前向きに考えられるようになったけど。変なところで頑固なんだよね、あいつ」
カミーユが呆れたように肩をすくめる。
「まだ、会うのは厳しい?」
「五分五分、と言ったところかな。家の中に入れてくれるかもしれないし、また閉じこもってしまうかもしれない」
「でも、1回会わなきゃ……」
「僕としては、もう少し待った方がいいと思うよ。焦ってまた振り出しに戻りたくないだろう?」
「うん……」
カミーユの言う通りだ。せっかくゼアルも前向きに考えてきてくれているのに、ここで追い詰めるようなことをするわけにはいかない。
「あと、どれぐらい待ったらいいかな?」
「少なくとも1日はいる。まだ心がグラグラしてるんだ。
でも、君とゼアルが会わないと解決しないからね……」
「ゼアルが、会いたい、みたいなこと言い出したら教えてくれる?それまで待つから……」
「もちろんさ。
ゼアルも贅沢だよね……こんな可愛い子、待たせるなんてさあ」
カミーユの言葉に顔が熱くなる。冗談のつもりでも、可愛いと言われて嬉しくならないはずがない。
「じゃあ、僕は帰るから……しっかり準備しとくんだよ?」
「うん!」
元気よく答えた私を見てカミーユは笑顔を浮かべると、手を振りながら去っていった。
そして翌朝、髪の手入れをしていた時に、カミーユがやってきた。
どこか晴れ晴れしい顔をしていて、期待してしまう。
「ふふ、いつでも行けるって感じだね」
「せめて、準備だけはしておこうかと。そ、それで……」
詰め寄るように言った私に、カミーユは待ってましたとばかりに、にっこりと微笑んだ。
「お待たせ。さぁ、ゼアルに会いに行こうか……」