ズキズキとした頭が唸る痛さで茜はまどろみの中から引き上げられた。
意識が混濁としているなか机の上にあるスマホに手をのばし、電源をつけると6時58分と大きく書かれた数字の上に小さく4月30日と映されている。画面を見た瞬間茜は頭痛の原因を知った。今でも心の奥に刻みつけられ、絶対に癒えることのない傷。
三年前、茜は事故に巻き込まれた。
よく晴れた日で家族そろって博物館へ行くところを信号無視をした車が突っ込んでくる。
「お兄ちゃん危ない…!」次の瞬間あかねは突き飛ばされ意識が暗転した。
気がつくとベットの上で寝ていた茜はゆっくりと起き上がり周りを見渡す。一瞬で自分が病院にいることを理解し何が起こったかを思い出そうとする。
「うっっっ…」
思い出そうとしたとき突然の頭の痛さでうなり声をあげていると、白衣を着た医者らしき人物が入ってきた。
「良かった。目覚めたのか。丸一日意識がなかったからね、こちら側としてもかなり心配だったよ。」声のする方を見ると20歳くらいの若い男性がいた。栗色の髪に整った顔立ちのしている医者であろうその人は茜からみてもとても魅力的である。彼の顔をまじまじと見つめていると
「すまんな。自己紹介を忘れていた。君のことを担当する医師になった神宮寺だ。よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
整った顔に似合うかっこいい声だなと茜は感じた。
その後神宮寺医師と何気ない話を続け、話題が途切れると彼はまじめな顔になり、
「茜くん、君に伝えなければいけないことがある。なかなか中学2年生にしては辛い内容で聞くと頭が痛くなると思うが、無理せず聞いてくれ。そして頭痛が激しくなったら俺に言って欲しい。鎮痛剤を処方する」
「わ、わかりました」
神宮寺の話し方と雰囲気が変わったことに茜は嫌な予感を感じ、全身から汗がにじみ出てくる。
「まず…君は記憶を失っている。これは解離性健忘といい、私たちの調査によると君は事故を含めて一年前までの記憶がない」
茜は全身の毛が逆立った。
「記憶が…ない…」
「その通りだ。君の場合は事故に巻き込まれたショックで記憶を失ったのだろう。そしてそのことが原因となり君は過去を思い出そうとすると頭痛が引き起こされる」
「失った記憶は戻ってきますか?」
「すまないが現在までこれといった治療法は確立されていない。脳の自然回復を待つしかないのが現状だ。だが、記憶が戻らないわけではない。時間をかけて取り戻す人も多くいる」
そういう先生の顔は悲しそうに見えた。だが、神宮司先生は一瞬で険しい顔へと戻り話を続ける。
「今のところ君を見る感じまだ頭痛は起きていないな。だがこれから話す内容は中学二年生の君が背負うはあまりにも重く、恐らく気を失うほどの頭痛が引き起こされるだろう。しかし、いずれ君は知らなくてはいけなくなる事実を君は知る必要がある。だから今から君に話すんだがいいか?」
茜は唾を飲み込み喉からゴクッという音が鳴る。
そのとき、考え付いた最悪の予想が脳をよぎった。
嫌だ、知りたくない。
そういう自分の気持ちを口から飛び出すのを茜は必死におさえる。
まだそういう結果になったと決まったわけではないし、今知らなくてもどうせいつか知るんだ。
事実を聞くのが怖い気持ちを抑えるために楽観的な考えを浮かべまくる。
大丈夫自分が助かったし、助かっているはずだ。
もしかしたら家族のほうの話ではないかもしれない。
「はい......」
自分の口から飛び出た声は驚くほど小さくそして弱弱しかった。
「本当にいいのか。もう少したいちょうが回復してからにしてもいいんだぞ」
一瞬、次回にしようと考えたがどうせ変わらないんだと思いとどまり、
「大丈夫です」と答えた。
心なしか先ほどより少し声が大きくなったと思う。
そんな茜の様子を確認した神宮寺もまた覚悟を決めたように話し出した。
「
意識が混濁としているなか机の上にあるスマホに手をのばし、電源をつけると6時58分と大きく書かれた数字の上に小さく4月30日と映されている。画面を見た瞬間茜は頭痛の原因を知った。今でも心の奥に刻みつけられ、絶対に癒えることのない傷。
三年前、茜は事故に巻き込まれた。
よく晴れた日で家族そろって博物館へ行くところを信号無視をした車が突っ込んでくる。
「お兄ちゃん危ない…!」次の瞬間あかねは突き飛ばされ意識が暗転した。
気がつくとベットの上で寝ていた茜はゆっくりと起き上がり周りを見渡す。一瞬で自分が病院にいることを理解し何が起こったかを思い出そうとする。
「うっっっ…」
思い出そうとしたとき突然の頭の痛さでうなり声をあげていると、白衣を着た医者らしき人物が入ってきた。
「良かった。目覚めたのか。丸一日意識がなかったからね、こちら側としてもかなり心配だったよ。」声のする方を見ると20歳くらいの若い男性がいた。栗色の髪に整った顔立ちのしている医者であろうその人は茜からみてもとても魅力的である。彼の顔をまじまじと見つめていると
「すまんな。自己紹介を忘れていた。君のことを担当する医師になった神宮寺だ。よろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
整った顔に似合うかっこいい声だなと茜は感じた。
その後神宮寺医師と何気ない話を続け、話題が途切れると彼はまじめな顔になり、
「茜くん、君に伝えなければいけないことがある。なかなか中学2年生にしては辛い内容で聞くと頭が痛くなると思うが、無理せず聞いてくれ。そして頭痛が激しくなったら俺に言って欲しい。鎮痛剤を処方する」
「わ、わかりました」
神宮寺の話し方と雰囲気が変わったことに茜は嫌な予感を感じ、全身から汗がにじみ出てくる。
「まず…君は記憶を失っている。これは解離性健忘といい、私たちの調査によると君は事故を含めて一年前までの記憶がない」
茜は全身の毛が逆立った。
「記憶が…ない…」
「その通りだ。君の場合は事故に巻き込まれたショックで記憶を失ったのだろう。そしてそのことが原因となり君は過去を思い出そうとすると頭痛が引き起こされる」
「失った記憶は戻ってきますか?」
「すまないが現在までこれといった治療法は確立されていない。脳の自然回復を待つしかないのが現状だ。だが、記憶が戻らないわけではない。時間をかけて取り戻す人も多くいる」
そういう先生の顔は悲しそうに見えた。だが、神宮司先生は一瞬で険しい顔へと戻り話を続ける。
「今のところ君を見る感じまだ頭痛は起きていないな。だがこれから話す内容は中学二年生の君が背負うはあまりにも重く、恐らく気を失うほどの頭痛が引き起こされるだろう。しかし、いずれ君は知らなくてはいけなくなる事実を君は知る必要がある。だから今から君に話すんだがいいか?」
茜は唾を飲み込み喉からゴクッという音が鳴る。
そのとき、考え付いた最悪の予想が脳をよぎった。
嫌だ、知りたくない。
そういう自分の気持ちを口から飛び出すのを茜は必死におさえる。
まだそういう結果になったと決まったわけではないし、今知らなくてもどうせいつか知るんだ。
事実を聞くのが怖い気持ちを抑えるために楽観的な考えを浮かべまくる。
大丈夫自分が助かったし、助かっているはずだ。
もしかしたら家族のほうの話ではないかもしれない。
「はい......」
自分の口から飛び出た声は驚くほど小さくそして弱弱しかった。
「本当にいいのか。もう少したいちょうが回復してからにしてもいいんだぞ」
一瞬、次回にしようと考えたがどうせ変わらないんだと思いとどまり、
「大丈夫です」と答えた。
心なしか先ほどより少し声が大きくなったと思う。
そんな茜の様子を確認した神宮寺もまた覚悟を決めたように話し出した。
「

