昼食時間。教室で1人、お弁当を食べていると。

「神谷さんのお弁当めちゃ美味しそうだね」
「はわ!」

 突然、同じクラスの柊博希君が声をかけてきて、驚いた私は変な声をあげた。

「ね、玉子焼きひとつちょーだい」
「え?良いですけど」

 と私が言うと「ありがと!」と言って、柊君は玉子焼きを食べた。

「は!?母ちゃんの玉子焼きよりうま!」
「え、あ、ありがとうございます」
「もしかしてこの弁当神谷さんが作ったの?」
「は、はい」
「マジで!?すご!」
「全然凄くないですよ」
「いーなぁ、俺もこんなうまい弁当食いてー。あ、そうだ!神谷さん、俺の弁当作ってくれない?一度でいいかからさ!材料費出すし!」

 と、柊君は手を合わせてお願いしてきた。

「いいですけど、そんな大したものは作れないですよ?」
「神谷さんが作ってくれるならなんでも食べるよ!」

 じゃ、よろしく!と言って、柊君は風のように去っていった。



 次の日。
 私はドキドキしながら昼食時間を待っていた。そして、昼食時間になると、柊君が私の席に来た。

「神谷さん、例のものは~……」

 と、ごますりのポーズをしながら柊君は聞いてきた。私は手を震わせながら、机の横に掛けていたランチバッグを柊君に渡した。

「美味しくなかったらごめんなさい」
「本当に作ってくれたんだ!ありがとう!」

 と笑顔で嬉しそうに言った。カッコ可愛くてドキッとする。すると後ろから。

「何あのデブ、柊君に手作り弁当あげてるの?」
「え~?デブ菌が移る~」

 と、女子達がクスクス笑った。
 それはそうだ、柊君は学年一のイケメンで、私は地味デブ女だもん。一緒に話してるなんておかしいよね。
 すると。

「神谷さんの玉子焼き美味しいんだぜ?食べてみ」

 柊君は弁当を開けると、女子達に玉子焼きをあげた。すると、女子達は美味しいと言ってくれた。

「だろ?うまいだろ!」

 と柊君は自分のように自慢げに言った。


 それから、私は殆ど毎日柊君の分のお弁当を作って柊君にあげた。そしていつしか、柊君は私の恋人になっていた。

 大人になって柊君……博希君と結婚してからも、私は毎日お弁当を作って渡した。

 博希君は美味しい美味しいと言って、私のご飯を食べてくれて。そのおかげで、折角の細マッチョ体型がふっくら体型になり、代わりに私は細身になった。

 ふっくらした博希君も可愛くて好きだけど、健康のためにも痩せなきゃかな?

 博希君の為に何かダイエットメニューでも考えようかなと思う今日この頃です。