「これ、ここ5年間の全地区の売上データ。地区ごとに統計しておいてくれる?」
そう冷たい口調で言う鈴井さんの言葉に驚きを隠せず、「えっ?!」と声を上げるわたし。
「全地区のですか?!でも、それって販促部の仕事じゃ、」
とわたしが疑問を口にしようとすると、鈴井さんは「営業部の益田課長に頼まれてるの。」とわたしの言葉を遮るように言った。
「来栖さん、仕事が出来るんだから、無理ってことないわよね?今日中にお願いね。」
「えっ!今日中ですか?!」
「じゃあ、よろしく。」
鈴井さんは嫌味のようにそう言うと、クルリと向きを変え、自分のデスクへと戻って行った。
わたしはそんな鈴井さんの後ろ姿をゲッソリとしながら見つめたあと、自分のデスクに山積みになったファイルたちに視線を移した。
これを、、、今日中に?
絶対、定時までに終わらない、、、
でも、益田課長に頼まれてるなら仕方ないか、、、
わたしは一つ深い溜め息をつくと、自分の仕事には手を付けられず、鈴井さんに言われた通り地区ごとの統計を始めた。
その作業はあまりにも膨大で、わたしは休憩も取らないままキーボードを打ち、パソコンと睨めっこを続けた。
そして、気が付けば定時を迎え、周りの社員たちは順々に退勤していく。
しかし一向に終わる気配が見られないわたしの作業。
完全に残業確定だ。
「あと、半分かぁ、、、」
そう呟きながら、わたしは手を休める暇もなく、次のファイルを手に取った。
