「凪紗、おはよ!」
朝から爽やかにそう声を掛けてきたのは、同期で営業部の天海蒼大だ。
「あ、蒼大。おはよう。」
会社のエレベーター待ちをしていたわたしは、蒼大に挨拶を返し、同じくエレベーター待ちをする為に隣にやって来た蒼大を見上げた。
「営業部のエースは、相変わらず朝から爽やかだね〜。」
「そんなことないよ。凪紗は、販促部で引っ張りだこだからお疲れみたいだな。」
そう言って、蒼大はハハッと苦笑し、エレベーターの階数に視線を移した。
蒼大とは、同期の中で一番仲が良く、入社して5年の仲だ。
営業部でトップの業績を保ち続ける蒼大は"営業部のエース"と有名な上に、スラッとした高身長のモデル体型に顔立ちも整っている為、大勢の女性社員たちから注目を浴びていた。
蒼大と仲の良いわたしは、そんな女性社員たちから何度「天海くんのLINE教えてもらえる?」と声を掛けられたか分からない。
そして、やっと下りてきたエレベーターに乗り込むと、閉まるギリギリで駆け込んで来た女性社員が居たのだが、それはわたしの2年先輩である鈴井りかさんだった。
鈴井さんは「おはよう、天海くん!」と、まるでわたしが見えていないかのように蒼大だけに挨拶をした。
まぁ、こんなのいつもの事だ。
誰から見ても蒼大に好意があるように見える鈴井さんは、蒼大と仲の良いわたしを目の敵にしているのだ。
蒼大が「おはようございます。」と鈴井さんに挨拶を返したあと、わたしも一応鈴井さんに「おはようございます。」と挨拶をしたが、鈴井から挨拶が返ってくることはなかった。
