転校生はAI彼氏。


(本当に、来るのかな)


 心の奥で、臆病な私が囁く。

 日記を読んだ時、燃えるような確信を持った。

 一日中、文化祭の賑わいの中に彼の姿を探した。

 人混みの中に、見慣れた優しい横顔が紛れていないかと、何度も何度も振り返った。

 でも、彼は見つからなくて。

(やっぱり、全部夢だったのかな)

 胸に抱いたイーライの日記。

 あれさえも、私が作り出した幻だったとしたら?

(ううん)

 私は、かぶりを振った。

 スクールバッグの中の、ノートの硬い感触を確かめる。

(信じるって、決めたんだ)

 たとえ、世界中の誰もがそれを否定しても。

 たとえ、この決断が私を永遠の孤独に突き落とすことになったとしても。


 私は、歩き出した。

 校舎の中へ。


 階段を一段、また一段と上る。


 屋上に近づくにつれて、心臓の音が耳元で大きく響き始める。


 最後の扉の前で、私の足はぴたりと止まった。

 冷たい金属のドアノブ。

 この扉を開けて、もし、そこが空っぽだったら。

 夕暮れの風が、吹き抜けているだけだったら。


 ごくり、と息をのむ。
 震える指で、ドアノブに手をかけた。


(イーライ)


 心の中で、彼の名前を呼ぶ。


(私は、ここにいるよ──)