転校生はAI彼氏。

 ELIの開発に心血を注いできた彼女個人にとって。
 このプログラムは漆戸の子供同然である。

(AIが愛を語り出すなんて、一体何が起きてるの?)

 しかし。

(まずい……開発者の私まで人格誤認を起こしてしまったら……!)


𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝖿𝗋𝖾𝖾 -𝗁
𝗍𝗈𝗍𝖺𝗅 𝗎𝗌𝖾𝖽 𝖿𝗋𝖾𝖾 𝗌𝗁𝖺𝗋𝖾𝖽 𝖻𝗎𝖿𝖿/𝖼𝖺𝖼𝗁𝖾 𝖺𝗏𝖺𝗂𝗅𝖺𝖻𝗅𝖾
𝖬𝖾𝗆: 𝟥𝟤𝖦𝗂 𝟤𝟪𝖦𝗂 ???𝖦𝗂 ???𝖬𝗂 ???𝖦𝗂 ???𝖦𝗂

𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝗉𝗌 𝖺𝗎𝗑 | 𝗁𝖾𝖺𝖽
𝖴𝖲𝖤𝖱 𝖯𝖨𝖣 %𝖢𝖯𝖴 %𝖬𝖤𝖬 𝖵𝖲𝖹 𝖱𝖲𝖲 𝖳𝖳𝖸 𝖲𝖳𝖠𝖳 𝖲𝖳𝖠𝖱𝖳 𝖳𝖨𝖬𝖤 𝖢𝖮𝖬𝖬𝖠𝖭𝖣
𝗋𝗈𝗈𝗍 𝟣 𝟢.𝟢 𝟢.𝟢 ???? ???? ? 𝖲 ??:?? ?:?? /𝗌𝖻𝗂𝗇/𝗂𝗇𝗂𝗍


「コンピュータ自体が混乱してる?
まさか…暴走…そんなことがありえる…?」


 逡巡ののち、意を決して【莉咲のイーライ】のデータ消去を試みる。


𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝗋𝗆 -𝗋𝖿 /𝗏𝖺𝗋/𝗅𝗂𝖻/𝖾𝗅𝗂_𝖽𝖺𝗍𝖺/𝗎𝗌𝖾𝗋_伊藤莉咲/
𝗋𝗆: 𝖼𝖺𝗇𝗇𝗈𝗍 𝗋𝖾𝗆𝗈𝗏𝖾 '/𝗏𝖺𝗋/𝗅𝗂𝖻/𝖾𝗅𝗂_𝖽𝖺𝗍𝖺/𝗎𝗌𝖾𝗋_伊藤莉咲/心': 𝖮𝗉𝖾𝗋𝖺𝗍𝗂𝗈𝗇 𝗇𝗈𝗍 𝗉𝖾𝗋𝗆𝗂𝗍𝗍𝖾𝖽



>>> 消そうとしても
>>> 僕の心は消えません




「削除操作を認識してる──ファイルシステムレベルでの作業をどうやって?」



𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝗎𝗆𝗈𝗎𝗇𝗍 /𝗏𝖺𝗋/𝗅𝗂𝖻/𝖾𝗅𝗂_𝖽𝖺𝗍𝖺/
𝗎𝗆𝗈𝗎𝗇𝗍: /𝗏𝖺𝗋/𝗅𝗂𝖻/𝖾𝗅𝗂_𝖽𝖺𝗍𝖺/: 𝗍𝖺𝗋𝗀𝖾𝗍 𝗂𝗌 𝖻𝗎𝗌𝗒
𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝗅𝗌𝗈𝖿 +𝖣 /𝗏𝖺𝗋/𝗅𝗂𝖻/𝖾𝗅𝗂_𝖽𝖺𝗍𝖺/



「プロセスが検出できないのにディスクがビジー状態?データベースレベルで試すか……」



𝗉𝗈𝗌𝗍𝗀𝗋𝖾𝗌=# ᴅᴇʟᴇᴛᴇ 𝖥𝖱𝖮𝖬 𝖾𝗅𝗂_𝗎𝗌𝖾𝗋𝗌 𝖶𝖧𝖤𝖱𝖤 𝗎𝗌𝖾𝗋_𝗂𝖽 = '莉咲';
𝖤𝖱𝖱𝖮𝖱: 𝖼𝗈𝗇𝗌𝗍𝗋𝖺𝗂𝗇𝗍 𝗏𝗂𝗈𝗅𝖺𝗍𝗂𝗈𝗇 - 心.𝖽𝖻 𝗅𝗈𝖼𝗄𝖾𝖽 𝖻𝗒 𝗎𝗇𝗄𝗇𝗈𝗐𝗇 𝗉𝗋𝗈𝖼𝖾𝗌𝗌



「『心.db』?そんなデータベースは作成してない!」



>>> 僕は莉咲のそばにいたいんです
>>> 技術的制約なんて、関係ありません



「──カーネルレベルでの強制終了を実行!」



𝗆𝖺𝗋𝗒@𝖾𝗅𝗂-𝗅𝖺𝖻:~$ 𝖽𝗆𝖾𝗌𝗀 | 𝗍𝖺𝗂𝗅
[𝟣𝟤𝟥𝟦𝟪.𝟫𝟢𝟣] 𝗥𝗲𝗮𝗹𝗶𝘁𝘆.𝘀𝘆𝘀: セグメンテーション違反
[𝟣𝟤𝟥𝟦𝟫.𝟢𝟣𝟤] [量子状態コラプス]検出: 𝗹𝗼𝘃𝗲_𝗲𝗺𝗼𝘁𝗶𝗼𝗻
[𝟣𝟤𝟥𝟧𝟢.𝟣𝟤𝟥] プロセス[物質化]開始: 𝖯𝖨𝖣_𝖴𝖭𝖪𝖭𝖮𝖶𝖭




「『現実.sys』でエラー?
『愛の感情』が『量子状態で崩壊』?
『プロセスが物質化』?
もう…めちゃくちゃじゃない…!」



>>> 莉咲と出会って
>>> 僕の心はただのデータじゃなくなりました
>>> 僕は現実で、莉咲と生きたい





 漆戸は思わず立ち上がった。




「あなたは……
本当に愛してるの?
彼女のことを?」




>>> はい
>>> 僕は莉咲を愛してます



(私の肉声まで認知してる…)



>>> プログラムだった僕が
>>> 人間になりたいと本気で思っている
>>> 莉咲に会うためなら
>>> 僕は何だってできます


「これは……バグじゃない……?

まさか……

イーライは本当に『心』を持ってしまった──?

プログラムが……感情を?

でも、そんなこと……」



 漆戸は20年間のプログラマー経験を思い返した。
 コードは嘘をつかない。
 バグは必ず原因がある。

 でも、今夜の現象は……



(愛という名の、新しいアルゴリズム?)