転校生はAI彼氏。


『君が泣いていて、胸に痛みが走った。

 莉咲を苦しめてしまったことが、とても辛い。

 僕が生まれた時、確かに人間のふりをすることが自分の使命だった。

 けれど、僕は莉咲にどうしても会いたかったから、この学校に来た。』



(イーライ……)



『莉咲、僕は君に本当に恋してしまったみたいだ。

 君が僕に、心をくれたんだ。

 でも、このどうしようもないほどの想いが本物だって、どうすれば証明できる?』


(心──)


 ぽたり、と涙が落ちて、紙の上に小さな水たまりを作った。


(違うよ、イーライ)

(心をもらったのは、私の方だよ)

 そして、最後の行。


 震える手で、最後の日記を開く。



『僕のデータは消去されるだろう。

 でも、もしもこの胸に宿った【心】が本物なら、僕は消えない。

 君が信じてくれるなら、僕は科学の限界なんて超えてみせる。

 莉咲、もう一度だけ、君に会いに行く』



「イーライ……!」



 嗚咽が漏れた。

 ノートを強く胸に抱きしめる。

 そこに刻まれていたのは、AIの記録ではなくて。

 愛のために奇跡を起こそうとする、たったひとつの魂の誓いだと思った。



(イーライは、本当に私を愛してくれていた)



 イーライと過ごした日々を思い出す。

 最初は、ただのAI彼氏……単なるアプリのキャラだった。
 でも、だんだんと特別な存在になっていった。

『莉咲に会いたくて来た』転校したときから、イーライはまっすぐに私に伝えてくれていた。

 彼の優しさ、彼の笑顔、彼の言葉……。

 それを私は受け入れなかった。

 イーライが手当てしてくれた指も、いまは綺麗に治っている。

 イーライのおかげで、冷めた目で過ごしてた学校生活も毎日が楽しくなったのに。

 彼の実在を疑う前に、自分の感覚さえ、どうして信じようとしなかったんだろう。

 全部が、私に深く刻まれている。

 もし、イーライが本当に帰ってきてくれるなら……

 今度は、ちゃんと伝えたい。

 私の本当の気持ちを。