転校生はAI彼氏。

「はぁっ、はぁっ……!」

 息を切らして学校に駆け戻ったけれど、教室には誰もいなかった。
 夕日に照らされた机と椅子が、静かに並んでいるだけ。

「イーライ……!」

 屋上、中庭、図書室。

 どこかに……どこかにイーライがいる気がして。
 彼と過ごした思い出の場所を、夢中で駆け回った。

 でも、彼の姿はどこにもない。

 膝から崩れ落ちそうになるのを堪えて、もう一度教室に戻る。

 がらんとした教室が、やけに広く感じた。

 その時だった。

「伊藤さん? まだ残ってたんですか」

 担任の田中先生が、教室の後ろのロッカーの前に立っていた。
 その手には、空の段ボール箱。
 そして先生は、イーライが使っていたロッカーを開けていた。

「先生……そのロッカー……」

「空にしないといけないんですよ。これしか入ってないれど」

 先生がロッカーから一冊のノートを取り出して、段ボール箱に入れようとする。

「待ってください!」

 私は叫んでいた。

「それ、イーライのですよね!? 捨てないで!」

「けど、彼は──伊藤さん。漆戸さんから話を聞いたでしょう?」

 先生が困ったように眉を下げる。

 ああ、田中先生も、私が狂ってると思ってるんだ。

 かまわない。

 AIに恋したおかしな子供だと思われてたってかまわない。

「お願いします!」

 私は先生の前に駆け寄っていた。

「だって……本当にただの錯覚なら!

ここにノートさえ残ってるはずない…

それは、彼が……彼が、いたっていう、たった一つの証拠なんです!」