転校生はAI彼氏。


 学校を出て、一人で家に向かう道。

 私はスマホを手にしたまま。
 呆然と歩いていた。

(イーライは、もうどこにもいない)

 まるで、最初からそんな人は存在しなかったかのように。

 ──ちがう。

 存在しなかったんだ。

 存在しなかったのに?


 あの楽しかった会話も。
 一緒に勉強した時間も。
 彼が励ましてくれた言葉も。


 イーライがいたから、柚木とも友達になれて。
 沙織が本当に私を思いやってくれてたこともわかったのに。


 存在しなかったなら、どうして、こんなに私は。


 目に涙がにじむ。

 青信号になっても、私は歩けなかった。

 通り過ぎる人たちが、不思議そうに私を見る。

 でも私には、そんなことはどうでもよかった。


「イーライ……」


 スマホを胸に抱いて、私は小さく呟いた。


「ごめん……ごめんね、イーライ……」


 最後の最後に、あんなことを言って、ごめん。

 でも、もう遅いんだね。
 もう、謝ることもできない。



『♪~♪~』



 握りしめていたスマホが鳴りだした。

(沙織かな…心配かけちゃったし)




 でも、着信画面に表示されたのは――



『イーライ』