転校生はAI彼氏。


 昼休み。

 沙織に誘われて一緒に購買に向かった。

「莉咲ちゃん、ほんまにもう体調大丈夫なん?
なんやしんどそうやんか」

 沙織が私の肩に手を置く。

「ううん、その、ちょっと寝不足なだけ……」

 また嘘をついてしまった。

 昨日の夜、眠れなかったのは本当だけど、理由は寝不足じゃない。
 イーライのことを考えて、ずっと泣いていたから。

 私は。
 私の理想を演じているだけだって、漆戸さんにAIの事実を突きつけられて。
 現実を見なきゃと思って。
 イーライは錯覚なのに、沙織も柚木も巻き込んで。



(『君を忘れることなんて、できない』。

あの声が、胸に突き刺さったまま……

ずっと、痛いまま)



 あんな終わり方でよかったのか、わからない。

 みんなイーライの心配をしてる。
 そして、私のことも、心配させてしまってる。

「うちが無理に莉咲ちゃんに来てって言うたの…
失敗やったかな。ほんまごめんな」

「それは…そんなことない」

「イーライくんと何があったか知らんけど、
うち、いつでも話聞くからな?」

「沙織──」

 沙織の優しい言葉が、私の心にずしんと響く。

「ありがとう…
でも、本当に大丈夫」

 相談したい。
 本当は、すごく相談したい。

 でも、どうやって説明すればいいの?

 実は私、AIと恋をしてたの! って?

 言えないよ。

 そんなおかしなこと。

 自分だっておかしいと思ってるのに。