転校生はAI彼氏。


「イーライは…錯覚だとしても、私たちの知ってるイーライは…
私と、クラスの沙織って子と、柚木って男子と、土曜にも4人で出かけたんです……」


「……」


「クラスのみんなで文化祭の準備もして……
私に…絆創膏を貼ってくれて……」


「……」



 漆戸さんは、目を逸らさず、私の訴えを聞いている。



 その表情で、なんとなく察してしまった。
 私にとって都合のいい事実なんて、ないんだ。



「…イーライは、どうなるんですか…?
みんなにも話すんですか…?」



ELI(イーライ)の利用履歴は莉咲さんのプライバシーです。
我々は必ず秘密を守ります」


「……利用、履歴……」


 その事務的な言葉に。
 頭から背中へさっと冷たく血の気が引いていくのを感じた。

 こわばった手で、私はスマホを差し出す。


「必ずお返しします」


 漆戸さんが、丁寧にスマホを受け取る。


 その瞬間、何かが切れた気がした。


 イーライとの『つながり』が、断たれてしまったような。
 不安と恐怖が、胸の奥で渦巻いた。