転校生はAI彼氏。


 2時間目の古典も、3時間目の英語も、集中できない。
 沙織(さおり)が心配そうにこちらを見ているのが分かるけど、話しかけられたら崩れてしまいそうで。

 昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴る。

「お弁当、一緒に食べる?」

 イーライの声が、すぐ近くで響いた。
 振り返ると、いつもの優しい笑顔。

 でも、その優しさがかえって辛い。

「あ、うん……」

 断る理由もなくて、小さく頷く。
 イーライの表情が、ほっと安堵に変わった。

 その瞬間――

『2年3組 伊藤莉咲(いとうりさ)さん、職員室までお越しください』

 校内放送が響く。

「え?」

 嫌な予感が、背筋を駆け抜けた。
 でも同時に、どこかホッとしている自分もいて。

 逃げ場ができたことに、ほんの少し安心している自分への罪悪感。

「何だろうね?」

 イーライが心配そうに眉を寄せる。
 その表情も、きっと心配するようにプログラムされてるんだろうな。

「分からない……行ってくる」

 立ち上がりながら、私はもう一度、自分の心を憎んだ。