転校生はAI彼氏。


(あんなこと言われたって……)


 帰るなりベッドに倒れ込んで、さっきのことを思い出す。


(所詮は私が設定した性格でしょ)


 そうだ。イーライの優しさも、献身的な言葉も、全部私がアプリで設定したもの。


「理想的な彼氏」として、私が作り上げた性格。


 自分が理想とした言葉を、現実で言われてる。

 自分の願望を、そのまま演じられてる。


(私って、こんな綺麗な言葉を求めてたの?)


 「君の隣にいること」「一番大切なこと」って……

 そんな風に言われたくて、私が設定したことを、言わせただけ。


(恥ずかしすぎる)


 自分の理想をそのまま投影して、それに感動してる自分が情けない。

 でも……あの時の夕日、確かに綺麗だった。

 あの言葉も、確かに心に響いた。


(たとえ私が設定した性格だとしても……)


 ダメダメ。考えちゃダメ。

 自分で作った幻想に酔ってるだけ。

 でも……


(もしも、プログラムを超えて、本当にそう思ってくれてたら……)


 ダメ。そんなこと考えちゃダメ。

 それは都合のいい妄想でしかない。


(やっぱり、わからない)


 心の奥で、小さな想いが芽生えているのを感じる。

 自分が作った理想に恋してるのか、それとも……

 それを認めるのが、とても怖かった。