「おはよう、莉咲」

 いつものようにイーライが声をかけてくれる。……アプリの画面越しじゃなく、教室に、制服姿のイーライがいる。

「おはよう」

 昨日よりも自然に挨拶できた気がする。でも、心の奥にはまだ複雑な気持ちがある。

「昨日は本当にありがとう」

「それって……」

「君と話せて。画面越しじゃなく、同じ空間で」

 その言葉に、ドキッとしてしまう。

(そんな風に思ってたの……?)






「莉咲。また一緒にお昼食べない?」

 昼休みに、イーライが誘ってくれた。

「う、うん……」

 今日も屋上へ。昨日と同じベンチに並んで座る。

「君がよく話してくれてたこの場所……実際に来てみて、なぜ君がここを好きなのかがわかる気がする」

「そうかな……」

「うん。ここなら、ゆっくり話せるし」

 イーライが空を見上げる。

「君がいつも『屋上から見る景色が好き』って話してくれてた。その意味が、今ならわかる」

「意味って……?」

「画面越しじゃなく、君の隣にいること。
君と同じ風を感じて、同じ景色を見ていること」

(こんなこと言われたことない……)

 心臓が早鐘を打つ。でも、どう答えたらいいのかわからない。