王女様にクリスマスケーキを作ることにしたアリアたちはルミエール王国の近くにあるイチゴ畑へやって来ました。
「着いた。ここがイチゴ畑よ」
「わぁ…!イチゴがたくさん。甘酸っぱい香りがしてきた。ねぇベル、凄いね。…ベル?」
おや?アリアが話しかけてもベルは返事をしません。アリアとエマが心配していると、ジュルっとヨダレをすすることが聞こえてきました。
もしかして…
「…たくさんのイチゴ」
「べ、ベル。ヨダレが垂れているよ?」
「…はっ!アタシとしたことが、たくさんのイチゴを目の前にしてお腹が空いてきたみたい」
やっぱり、お腹を空かせていました。食いしん坊なベルにとって、この広いイチゴ畑はまさに夢の世界。
「もう〜ベルったら。心配して損したわ」
「ごめんなさい」
アリアとベルのやり取りにエマはクスクスと笑いました。
「さぁ、気を取り直して王女様のためにイチゴを集めるわよ!」
「待ってベル」
イチゴ畑に飛び出しそうになったベルをエマが止めました。
「どうしたの?」
「まずはイチゴを育てているおじいさんとおばあさんの所に行きましょう。ここはお城の畑だからちゃんと許可を取らないと」
「詳しいわねエマ」
「う、うん。前に聞いたことがあるんだ。あ、おじいさーん」
畑でおしゃべりをしている声が聞こえて、お家からおじいさんとおばあさんが出てきました。エマが手を振るとおじいさんも振り返してくれました。
「こんにちは」
「こんにちは。はて?キミたちは誰じゃ?」
おじいさんに名前を聞かれてアリアたちは自己紹介をしました。
おじいさんとおばあさんはイチゴ畑の近くに住む老夫婦。毎年この時期に収穫したイチゴをお城へ売買しています。
あいさつをしたアリアはイチゴを分けてもらえないかおじいさんに話します。
「なるほど。エミル姫のためにイチゴのケーキを」
「はい。ここのイチゴのことはお友だちのエマが教えてくれて。おじいさんお願いします。王女様のためにイチゴを分けてください」
「いいじゃろ。その代わり、収穫を手伝ってもらうよ」
「やったー!ベル、エマ、ハイタッチ」
イチゴがもらえることになって、嬉しさのあまりアリアたちはハイタッチをしました。
さっそくベルはおじいさんとおばあさんと一緒に、アリアはエマと一緒にイチゴを収穫していきます。
おじいさんとおばあさんは昔一度だけ王女であるエミル姫の誕生日パーティーにお呼ばれされたことがありました。
自分たちが心を込めて作ったイチゴをエミル姫は満面の笑みを浮かべながら食べてくれたことを今でも覚えています。
「今年も食べてもらえるなんて光栄なことだよ」
おじいさんは毎年エミル姫のためにとびっきりのイチゴを届けるのを楽しみにしていました。
けど、今年は近くに住むお孫さんと一緒にクリスマスを過ごす約束をしていたのです。
「じゃあ、おじいさんたちは今年はお城へ行けないってこと?」
エマは少し悲しそうな表情をしました。
「行けないのは寂しいことじゃが、今年はキミたちがいる」
おじいさんはアリアたちを見ます。
「どうじゃろ。今年はキミたちがエミル姫のためにイチゴを届けてはもらえんかのう?」
おじいさんたちの願いにアリアは頷きます。
「まかせてください。私たちが責任を持って、このイチゴをエミル姫に届けます」
ベルとエマも同じ気持ちでした。届けたいおじいさんの気持ちに応えたいと思ったからです。
ケーキの分のイチゴも分けてもらったアリアたちはおじいさんたちに見送られながらルミエール王国のお城へ向かいます。
イチゴ畑を後にしたアリアたちはついにルミエール王国に到着しました。
旅立つ前は軽かったエミル姫のために集めたプレゼントでいっぱいです。
(エミル姫、喜んでくれるといいな)
アリアは重くなったリュックを見て、エミル姫の笑顔を思い浮かべました。
「さぁ、出発しましょう」
「待ってベル」
「アリア、どうしたの?」
ここに来る前からアリアは考えていたことがありました。それはエマのことです。
「エマ、せっかくだから一度お家に帰って見たらどうかな?」
「え?」
エマはルミエール王国のお城近くに住んでいます。しかし、せっかくの誕生日に家族や友だちとゆっくり過ごせないことがエマの心を苦しくしていました。
アリアはエマと一緒にお城へ行きたいけど、まずはお家へ帰って心配している家族とあってほしいと思っていたのです。
「お家の人、きっと心配しているよ。大切なエマが誕生日の日に家出したら心がとても苦しい、悲しくなると思うんだ」
「アリア…」
「アリアの言う通りよ。エマはとても家族や友だちのことを大切に思っているのはアタシたちがよく知っているわ。だから一度帰ってみたらどうかしら?」
アリアたちと旅をしていたエマはどこか悲しそうな表情をしていました。きっと家出したことを後悔していたのでしょう。
「ワタシ、帰ってみる。パパとママの悲しい顔は見たくない。心配かけてごめんって言ってくる」
アリアとベルに背中を押されたエマは一度、お家へ帰ることを決めました。
そしてアリアにはもうひとつ、エマに伝えたいことがあります。
「エマ、私たちとの約束よ。必ずお城で会いましょう。そして一緒に王女様に最高のクリスマスを届けよう…!」
「うん…!」
エマを見送ったアリアたちは箒に乗ってお城へ向かいます。
ルミエール王国のお城に着いたアリアたちは招待状を提出して、中へ入ります。
会場のホールは大きなシャンデリアが天井で輝いています。
中にはアリアの他に王様に呼ばれた魔女や魔法使いでいっぱいでした。
「どうしようベル。私、緊張してきた…」
「アリア落ち着いて。ここに来るまでたくさん頑張ってきたじゃない。自分を信じて。エマが来るまでアタシたちが頑張らないと」
「そ、そうだね。エマも今、頑張っている。ベル、私に力を貸して」
「もちろんよアリア!」
(ベルとエマと一緒に最高のクリスマスを届けて、王女様の誕生日をお祝いしたい。ここまで頑張ってきたんだ。立派な魔女になるんだ)
しかしアリアはいまだ緊張して、心臓がバクバクです。失敗しちゃいけない、立派な魔女になりたい。
無意識に自分にプレッシャーをかけていたのです。
会場の扉が開き、王様と王妃様が入ってきました。玉座に座ったお二人の後ろにはカーテンがあり、王女様のエミル姫であろう人影が見えました。
白いヒゲの支配人がマイクを持ってパーティーの説明をします。
「これより、エミル姫様の誕生日パーティー及び、クリスマスパーティーを開催します。魔女と魔法使いには、魔法を使ってエミル姫様の誕生日を盛大にお祝いください。尚、順番はくじ引きとなります」
メイドさんが持ってきたくじが入った箱から番号が書かれている紙を引きます。
アリアは12番。一番最後です。
「ベル、一番最後になっちゃったよ…」
「なら作戦会議をしましょう。最後によりインパクトをもっていくの。それにエマが来るまで時間を稼げると思えばいいのよ」
エマはまだ会場には来ていません。到着まで2人で乗り切れるのでしょうか。
1番から順番に魔女や魔法使いが思いおもいに魔法を披露していきます。王様と王妃様は珍しい魔法に笑みを浮かべています。
(次は私の番。ベルが励ましてくれたけど、やっぱり緊張して震える)
「次の者、前へ出なさい」
支配人がアリアを呼びました。体の震えがまだ止まらないアリアはゆっくり王様たちの前へ出ます。
「しっかりアリア」
「う、うん」
(大丈夫。自分を信じて。魔法のイマジネーションを崩しちゃダメ)
「初めまして。魔女のアリアです。こっちはベル。王女様に最高のクリスマスをお届けします…!」
(エマの分まで頑張るって決めたんだ)
「ベル、いくよ!」
「おーけーアリア。まずは花の種よ!」
アリアはネックレスを魔法の杖に変えて、ベルはリュックから持ってきた花の種を出しました。
ここに来る前に練習していた花を咲かせる魔法をするようです。
「種よ花を咲かせて。Let’s・magic!フラワー・シード」
魔法がかかった種から花が咲きました。成功です。
(やった!)
アリアは初めて花を咲かせられて喜びます。次の魔法でも失敗はなく、ベルと考えた作戦が成功しています。
続いて、もみの木に魔法の森で見つけたオーナメントの形をした木の実を魔法で飾っていきます。
成功すればとても大きなクリスマスツリーが完成します。
「いくわよアリア!そーれ!」
「オーナメントたちよ、風に乗って浮かび上がれ!Let’s・magic!スカイ・ウィンド」
オーナメントが風に乗って浮かび上がりました。次つぎともみの木に飾られていきます。その光景に王様たちは興味深々です。
「おぉ…!これが凄い!」
王様が感動していると王妃様も同じように出来上がっていくクリスマスツリーに目が離せなくなっています。
「これはクリスマスツリー…!しかもオーナメントは魔法の森で取れるものばかり。なんと美しいのでしょう」
完成したクリスマスツリーは他の魔女や魔法使いたちも注目します。
「やったわねアリア」
「うん。ベル、最後の仕上げいくよ!」
「えぇ。最後まで楽しみましょう」
最後はいよいよ魔法でクリスマスケーキを作っていきます。材料はお城に来る途中の市場で買ってきました。
薄力粉、卵、牛乳、バター、砂糖、生クリーム。そして、皆と収穫したイチゴ。
あとはアリアが魔法をかけるだけです。するとそこに、一人の女の子がホールに入ってきました。
「アリア!」
「エマ!!」
エマが駆けつけてくれたのです。
「遅れてごめんね」
「ううん。それよりちゃんとお話できた?」
「うん。アリアとベルが背中を押してくれたおかげでパパとママに話すことができたよ。ありがとう」
「よーしベル、エマ。王女様のためにケーキ作りするわよ!」
アリア、ベル、エマの3人はカゴいっぱいのイチゴを持って、再び王様たちの前に立ちます。
「王様、王妃様、王女様。このイチゴはお城の近くにある畑で収穫したものです。育てたおじいさんとおばあさんの思い、そして私たち3人からのプレゼントです!どうか、受け取ってください」
深呼吸をしてアリアは杖に力を集中させます。
「Let’s・magic!クッキング・メイク」
宙に浮かんだ材料たちは少しずつスポンジケーキの素になっていきます。火の魔法で焼こうとしたその時でした。
強すぎる炎がスポンジケーキをこがしてしまったのです。
「そんな…!!」
「ケーキが…」
黒こげになってしまったスポンジケーキを見てアリアはショックを受けます。
(そんな…。ここまできたのに)
アリアの目から涙が溢れ出しました。すると突然、エマがアリアの手をやさしく握りました。
「アリアあきらめないで。そんなのアナタらしくないわ」
「エマ…」
2人の手の上に今度はベルが手を乗せました。
「なに弱気になっているの?アリアはいつも失敗ばかりだったけど、最後まであきらめなかったじゃない。一度失敗したくらいで落ち込むなんてらしくないわね」
「ベル…。でも私、どうしたらいいか。私の魔法じゃ、王女様を喜ばすことなんてできないよ」
「いいえ、アリアの魔法はとてもあたたかく、とてもやさしい光に満ちあふれています」
「エマ…?」
「ワタシをパパとママの所へ帰ってあげてって言われた時、嬉しかった。どうしたらいいか、迷っている時こうしてアリアは真っ直ぐワタシと向き合ってくれたこと、とても嬉しかったよ」
アリアの優しさはエマの心に深く響いていました。どんなに落ち込んでいても、背中を押してくれる存在。それがアリアなのです。
アリアにしかできない特別でやさしい魔法です。
「…エマ、ベルありがとう…ありがとう」
2人に背中を押され、自信を取り戻したアリアは涙を拭いて、もう一度ケーキ作りを挑戦します。
(ベルとエマの気持ち、ムダにしたくない。お願い。私に力を)
「Let’s・magic!クッキング・メイク」
再び材料がスポンジケーキへと変わり始めます。次は火の魔法で焼き上げていきます。
(私は失敗が多くてあきらめそうになったことあったけど、こうして友だちが背中を押してくれるから頑張れる)
混ぜ終わった生地を型に入れていきます。さぁ、ここからが本番です。
「生クリームとイチゴはまかせて。アリアは焼くことに集中して」
ベルとエマがそれぞれ生クリームとイチゴのカットをしていきます。
アリアは杖に力を込めていきます。
(集中…集中)
「ケーキを焼き上げて。Let’s・magic!フレイム・ベイク」
型に入ったスポンジケーキの生地が炎を包まれました。
しばらくすると、甘く香ばしい匂いがホール中に広がっていきます。
そしてスポンジケーキの出来上がりました。
次はデコレーションです。ベルが作った生クリームとエマが切ったイチゴを乗せていきます。
そしてついに、ケーキが出来上がりました…!
一度は失敗したけど、あきらめないで挑戦したアリアたちに拍手が贈られます。
ケーキを3等分に切り、お皿に乗せて運ぼうとした。すると、王様からとある提案がされます。
「せっかく力を合わせて作ったケーキ、まずはキミたちが食べるといい」
「いいんですか?」
「あぁ」
王様の言葉に甘えてアリアたちはケーキを食べました。それはこれまで食べたことがない特別な味がしていました。
「美味しい〜!」
「今まで食べたケーキの中で一番美味しいわ…!」
食いしん坊のベルの口周りにはクリームがたっぷり付いていました。
切り分けたケーキは王様たちにも召し上がってもらいましょう。
「おぉ、これは…!」
「とても美味しいわ。どこかあたたかくて、どこかやさしい。こんなケーキは初めてよ」
支配人やメイドさん、他の魔女や魔法使いも美味しそうに食べています。だけど、王女様は一向に姿を見せません。
王様は立ち上がってアリアたちの方へ歩いてきました。
「アリア、ベル、それにエマ。美味しいケーキをありがとう。こんなに幸せな気持ちになったのは生まれてはじめてだ」
「あ、あの」
「なんだね?」
「エミル姫は…。エミル姫はケーキを喜んでくれましたか?」
アリアたちはエミル姫の姿を見ていません。ケーキを気にってくれなかったのかと不安になっています。
「あぁ、とても喜んでいたよ。エミル、そろそろ話してやったらどうだね?」
(え…?)
王様の目線は真っ直ぐエマの方を見ていました。
「はいお父様」
「お父様…ってまさか!」
エマは王様の横に並びます。そして深くお辞儀をしました。
「初めまして。ルミエール王国の王女、エミルと申します」
「えっ!?えぇぇぇー!!?」
(エマがエミル姫!?いったいどういう事??)
メイドさんが魔法を使って、エマの服をドレスに変えます。
ピンクのフリルがたっぷりのドレス、頭上にはティアラが輝いています。
「ヒミツにしててごめんなさい。エマはワタシが王女ってバレないために考えた名前なの」
「どうして隠してたの?」
ベルがエミルに質問します。
「王女とバレれば国に戻らないといけません。でもその前に、ワタシはアリアたちとお友だちになりたかったの」
「エミルはずっとさみしい思いをしていた。友だちとはパーティーの時しか会えないのに、城の仕事をばかりさせて。悪い父親だ。すまなかったなエミル」
「お父様、もういいのです。だって、そのおかげでアリアたちと出会えたんですもの。これからは国のために勉強をがんばっていきますわ」
「エマ…エミル姫」
「エミルと呼んでください。ワタシたちはもうお友だちなのですから」
「エミル…!うん、これからもよろしくね」
「はい!あのアリア、また会いに来てくれますか?」
「もちろんだよ。また魔法を届けに来るわね」
「ありがとう、アリア!!」
エミル姫はアリアを抱きしめました。その瞳では涙がきらりと光っています。
外はすっかり夜になっていました。バルコニーから見るルミエール王国はイルミネーションで光輝いています。
「わぁ…!とてもキレイね」
「ルミエール王国のイルミネーションは世界一なのよ。今日は楽しかったわ。アリアたちと冒険して、ケーキを作れて。最高の誕生日になったわ。ありがとう」
「こちらこそありがとう。エミルに最高のクリスマスを届けられて良かったわ。そうだ、ベル。リュックから雲と氷の結晶を出して」
「いいわよ。でもこれで何をするの?」
ベルから雲と氷の結晶を受け取ったアリアは魔法の杖を出しました。
「エミルにもうひとつプレゼントするの」
「もうひとつのプレゼント…!?ねぇねぇ、どんな魔法を見せてくれるの?」
「見てて。雲と氷の結晶よひとつに!Let’s・マジック!スノー・フォール」
雲と氷の結晶が天へと上って、ひとつの雲となりました。雲はルミエール王国に広がっていき、やがて雪が降り始めます。
「雪…!」
「スゴいわアリア!エミルに届けたいって気持ちがアリアの魔法に力をくれたのね」
「ベル、エミル。メリークリスマス」
「メリークリスマス」
魔法が結んだキセキの友情はいつまでも続いていきました。
Let’s・magic!みんな一緒にメリークリスマス!
「着いた。ここがイチゴ畑よ」
「わぁ…!イチゴがたくさん。甘酸っぱい香りがしてきた。ねぇベル、凄いね。…ベル?」
おや?アリアが話しかけてもベルは返事をしません。アリアとエマが心配していると、ジュルっとヨダレをすすることが聞こえてきました。
もしかして…
「…たくさんのイチゴ」
「べ、ベル。ヨダレが垂れているよ?」
「…はっ!アタシとしたことが、たくさんのイチゴを目の前にしてお腹が空いてきたみたい」
やっぱり、お腹を空かせていました。食いしん坊なベルにとって、この広いイチゴ畑はまさに夢の世界。
「もう〜ベルったら。心配して損したわ」
「ごめんなさい」
アリアとベルのやり取りにエマはクスクスと笑いました。
「さぁ、気を取り直して王女様のためにイチゴを集めるわよ!」
「待ってベル」
イチゴ畑に飛び出しそうになったベルをエマが止めました。
「どうしたの?」
「まずはイチゴを育てているおじいさんとおばあさんの所に行きましょう。ここはお城の畑だからちゃんと許可を取らないと」
「詳しいわねエマ」
「う、うん。前に聞いたことがあるんだ。あ、おじいさーん」
畑でおしゃべりをしている声が聞こえて、お家からおじいさんとおばあさんが出てきました。エマが手を振るとおじいさんも振り返してくれました。
「こんにちは」
「こんにちは。はて?キミたちは誰じゃ?」
おじいさんに名前を聞かれてアリアたちは自己紹介をしました。
おじいさんとおばあさんはイチゴ畑の近くに住む老夫婦。毎年この時期に収穫したイチゴをお城へ売買しています。
あいさつをしたアリアはイチゴを分けてもらえないかおじいさんに話します。
「なるほど。エミル姫のためにイチゴのケーキを」
「はい。ここのイチゴのことはお友だちのエマが教えてくれて。おじいさんお願いします。王女様のためにイチゴを分けてください」
「いいじゃろ。その代わり、収穫を手伝ってもらうよ」
「やったー!ベル、エマ、ハイタッチ」
イチゴがもらえることになって、嬉しさのあまりアリアたちはハイタッチをしました。
さっそくベルはおじいさんとおばあさんと一緒に、アリアはエマと一緒にイチゴを収穫していきます。
おじいさんとおばあさんは昔一度だけ王女であるエミル姫の誕生日パーティーにお呼ばれされたことがありました。
自分たちが心を込めて作ったイチゴをエミル姫は満面の笑みを浮かべながら食べてくれたことを今でも覚えています。
「今年も食べてもらえるなんて光栄なことだよ」
おじいさんは毎年エミル姫のためにとびっきりのイチゴを届けるのを楽しみにしていました。
けど、今年は近くに住むお孫さんと一緒にクリスマスを過ごす約束をしていたのです。
「じゃあ、おじいさんたちは今年はお城へ行けないってこと?」
エマは少し悲しそうな表情をしました。
「行けないのは寂しいことじゃが、今年はキミたちがいる」
おじいさんはアリアたちを見ます。
「どうじゃろ。今年はキミたちがエミル姫のためにイチゴを届けてはもらえんかのう?」
おじいさんたちの願いにアリアは頷きます。
「まかせてください。私たちが責任を持って、このイチゴをエミル姫に届けます」
ベルとエマも同じ気持ちでした。届けたいおじいさんの気持ちに応えたいと思ったからです。
ケーキの分のイチゴも分けてもらったアリアたちはおじいさんたちに見送られながらルミエール王国のお城へ向かいます。
イチゴ畑を後にしたアリアたちはついにルミエール王国に到着しました。
旅立つ前は軽かったエミル姫のために集めたプレゼントでいっぱいです。
(エミル姫、喜んでくれるといいな)
アリアは重くなったリュックを見て、エミル姫の笑顔を思い浮かべました。
「さぁ、出発しましょう」
「待ってベル」
「アリア、どうしたの?」
ここに来る前からアリアは考えていたことがありました。それはエマのことです。
「エマ、せっかくだから一度お家に帰って見たらどうかな?」
「え?」
エマはルミエール王国のお城近くに住んでいます。しかし、せっかくの誕生日に家族や友だちとゆっくり過ごせないことがエマの心を苦しくしていました。
アリアはエマと一緒にお城へ行きたいけど、まずはお家へ帰って心配している家族とあってほしいと思っていたのです。
「お家の人、きっと心配しているよ。大切なエマが誕生日の日に家出したら心がとても苦しい、悲しくなると思うんだ」
「アリア…」
「アリアの言う通りよ。エマはとても家族や友だちのことを大切に思っているのはアタシたちがよく知っているわ。だから一度帰ってみたらどうかしら?」
アリアたちと旅をしていたエマはどこか悲しそうな表情をしていました。きっと家出したことを後悔していたのでしょう。
「ワタシ、帰ってみる。パパとママの悲しい顔は見たくない。心配かけてごめんって言ってくる」
アリアとベルに背中を押されたエマは一度、お家へ帰ることを決めました。
そしてアリアにはもうひとつ、エマに伝えたいことがあります。
「エマ、私たちとの約束よ。必ずお城で会いましょう。そして一緒に王女様に最高のクリスマスを届けよう…!」
「うん…!」
エマを見送ったアリアたちは箒に乗ってお城へ向かいます。
ルミエール王国のお城に着いたアリアたちは招待状を提出して、中へ入ります。
会場のホールは大きなシャンデリアが天井で輝いています。
中にはアリアの他に王様に呼ばれた魔女や魔法使いでいっぱいでした。
「どうしようベル。私、緊張してきた…」
「アリア落ち着いて。ここに来るまでたくさん頑張ってきたじゃない。自分を信じて。エマが来るまでアタシたちが頑張らないと」
「そ、そうだね。エマも今、頑張っている。ベル、私に力を貸して」
「もちろんよアリア!」
(ベルとエマと一緒に最高のクリスマスを届けて、王女様の誕生日をお祝いしたい。ここまで頑張ってきたんだ。立派な魔女になるんだ)
しかしアリアはいまだ緊張して、心臓がバクバクです。失敗しちゃいけない、立派な魔女になりたい。
無意識に自分にプレッシャーをかけていたのです。
会場の扉が開き、王様と王妃様が入ってきました。玉座に座ったお二人の後ろにはカーテンがあり、王女様のエミル姫であろう人影が見えました。
白いヒゲの支配人がマイクを持ってパーティーの説明をします。
「これより、エミル姫様の誕生日パーティー及び、クリスマスパーティーを開催します。魔女と魔法使いには、魔法を使ってエミル姫様の誕生日を盛大にお祝いください。尚、順番はくじ引きとなります」
メイドさんが持ってきたくじが入った箱から番号が書かれている紙を引きます。
アリアは12番。一番最後です。
「ベル、一番最後になっちゃったよ…」
「なら作戦会議をしましょう。最後によりインパクトをもっていくの。それにエマが来るまで時間を稼げると思えばいいのよ」
エマはまだ会場には来ていません。到着まで2人で乗り切れるのでしょうか。
1番から順番に魔女や魔法使いが思いおもいに魔法を披露していきます。王様と王妃様は珍しい魔法に笑みを浮かべています。
(次は私の番。ベルが励ましてくれたけど、やっぱり緊張して震える)
「次の者、前へ出なさい」
支配人がアリアを呼びました。体の震えがまだ止まらないアリアはゆっくり王様たちの前へ出ます。
「しっかりアリア」
「う、うん」
(大丈夫。自分を信じて。魔法のイマジネーションを崩しちゃダメ)
「初めまして。魔女のアリアです。こっちはベル。王女様に最高のクリスマスをお届けします…!」
(エマの分まで頑張るって決めたんだ)
「ベル、いくよ!」
「おーけーアリア。まずは花の種よ!」
アリアはネックレスを魔法の杖に変えて、ベルはリュックから持ってきた花の種を出しました。
ここに来る前に練習していた花を咲かせる魔法をするようです。
「種よ花を咲かせて。Let’s・magic!フラワー・シード」
魔法がかかった種から花が咲きました。成功です。
(やった!)
アリアは初めて花を咲かせられて喜びます。次の魔法でも失敗はなく、ベルと考えた作戦が成功しています。
続いて、もみの木に魔法の森で見つけたオーナメントの形をした木の実を魔法で飾っていきます。
成功すればとても大きなクリスマスツリーが完成します。
「いくわよアリア!そーれ!」
「オーナメントたちよ、風に乗って浮かび上がれ!Let’s・magic!スカイ・ウィンド」
オーナメントが風に乗って浮かび上がりました。次つぎともみの木に飾られていきます。その光景に王様たちは興味深々です。
「おぉ…!これが凄い!」
王様が感動していると王妃様も同じように出来上がっていくクリスマスツリーに目が離せなくなっています。
「これはクリスマスツリー…!しかもオーナメントは魔法の森で取れるものばかり。なんと美しいのでしょう」
完成したクリスマスツリーは他の魔女や魔法使いたちも注目します。
「やったわねアリア」
「うん。ベル、最後の仕上げいくよ!」
「えぇ。最後まで楽しみましょう」
最後はいよいよ魔法でクリスマスケーキを作っていきます。材料はお城に来る途中の市場で買ってきました。
薄力粉、卵、牛乳、バター、砂糖、生クリーム。そして、皆と収穫したイチゴ。
あとはアリアが魔法をかけるだけです。するとそこに、一人の女の子がホールに入ってきました。
「アリア!」
「エマ!!」
エマが駆けつけてくれたのです。
「遅れてごめんね」
「ううん。それよりちゃんとお話できた?」
「うん。アリアとベルが背中を押してくれたおかげでパパとママに話すことができたよ。ありがとう」
「よーしベル、エマ。王女様のためにケーキ作りするわよ!」
アリア、ベル、エマの3人はカゴいっぱいのイチゴを持って、再び王様たちの前に立ちます。
「王様、王妃様、王女様。このイチゴはお城の近くにある畑で収穫したものです。育てたおじいさんとおばあさんの思い、そして私たち3人からのプレゼントです!どうか、受け取ってください」
深呼吸をしてアリアは杖に力を集中させます。
「Let’s・magic!クッキング・メイク」
宙に浮かんだ材料たちは少しずつスポンジケーキの素になっていきます。火の魔法で焼こうとしたその時でした。
強すぎる炎がスポンジケーキをこがしてしまったのです。
「そんな…!!」
「ケーキが…」
黒こげになってしまったスポンジケーキを見てアリアはショックを受けます。
(そんな…。ここまできたのに)
アリアの目から涙が溢れ出しました。すると突然、エマがアリアの手をやさしく握りました。
「アリアあきらめないで。そんなのアナタらしくないわ」
「エマ…」
2人の手の上に今度はベルが手を乗せました。
「なに弱気になっているの?アリアはいつも失敗ばかりだったけど、最後まであきらめなかったじゃない。一度失敗したくらいで落ち込むなんてらしくないわね」
「ベル…。でも私、どうしたらいいか。私の魔法じゃ、王女様を喜ばすことなんてできないよ」
「いいえ、アリアの魔法はとてもあたたかく、とてもやさしい光に満ちあふれています」
「エマ…?」
「ワタシをパパとママの所へ帰ってあげてって言われた時、嬉しかった。どうしたらいいか、迷っている時こうしてアリアは真っ直ぐワタシと向き合ってくれたこと、とても嬉しかったよ」
アリアの優しさはエマの心に深く響いていました。どんなに落ち込んでいても、背中を押してくれる存在。それがアリアなのです。
アリアにしかできない特別でやさしい魔法です。
「…エマ、ベルありがとう…ありがとう」
2人に背中を押され、自信を取り戻したアリアは涙を拭いて、もう一度ケーキ作りを挑戦します。
(ベルとエマの気持ち、ムダにしたくない。お願い。私に力を)
「Let’s・magic!クッキング・メイク」
再び材料がスポンジケーキへと変わり始めます。次は火の魔法で焼き上げていきます。
(私は失敗が多くてあきらめそうになったことあったけど、こうして友だちが背中を押してくれるから頑張れる)
混ぜ終わった生地を型に入れていきます。さぁ、ここからが本番です。
「生クリームとイチゴはまかせて。アリアは焼くことに集中して」
ベルとエマがそれぞれ生クリームとイチゴのカットをしていきます。
アリアは杖に力を込めていきます。
(集中…集中)
「ケーキを焼き上げて。Let’s・magic!フレイム・ベイク」
型に入ったスポンジケーキの生地が炎を包まれました。
しばらくすると、甘く香ばしい匂いがホール中に広がっていきます。
そしてスポンジケーキの出来上がりました。
次はデコレーションです。ベルが作った生クリームとエマが切ったイチゴを乗せていきます。
そしてついに、ケーキが出来上がりました…!
一度は失敗したけど、あきらめないで挑戦したアリアたちに拍手が贈られます。
ケーキを3等分に切り、お皿に乗せて運ぼうとした。すると、王様からとある提案がされます。
「せっかく力を合わせて作ったケーキ、まずはキミたちが食べるといい」
「いいんですか?」
「あぁ」
王様の言葉に甘えてアリアたちはケーキを食べました。それはこれまで食べたことがない特別な味がしていました。
「美味しい〜!」
「今まで食べたケーキの中で一番美味しいわ…!」
食いしん坊のベルの口周りにはクリームがたっぷり付いていました。
切り分けたケーキは王様たちにも召し上がってもらいましょう。
「おぉ、これは…!」
「とても美味しいわ。どこかあたたかくて、どこかやさしい。こんなケーキは初めてよ」
支配人やメイドさん、他の魔女や魔法使いも美味しそうに食べています。だけど、王女様は一向に姿を見せません。
王様は立ち上がってアリアたちの方へ歩いてきました。
「アリア、ベル、それにエマ。美味しいケーキをありがとう。こんなに幸せな気持ちになったのは生まれてはじめてだ」
「あ、あの」
「なんだね?」
「エミル姫は…。エミル姫はケーキを喜んでくれましたか?」
アリアたちはエミル姫の姿を見ていません。ケーキを気にってくれなかったのかと不安になっています。
「あぁ、とても喜んでいたよ。エミル、そろそろ話してやったらどうだね?」
(え…?)
王様の目線は真っ直ぐエマの方を見ていました。
「はいお父様」
「お父様…ってまさか!」
エマは王様の横に並びます。そして深くお辞儀をしました。
「初めまして。ルミエール王国の王女、エミルと申します」
「えっ!?えぇぇぇー!!?」
(エマがエミル姫!?いったいどういう事??)
メイドさんが魔法を使って、エマの服をドレスに変えます。
ピンクのフリルがたっぷりのドレス、頭上にはティアラが輝いています。
「ヒミツにしててごめんなさい。エマはワタシが王女ってバレないために考えた名前なの」
「どうして隠してたの?」
ベルがエミルに質問します。
「王女とバレれば国に戻らないといけません。でもその前に、ワタシはアリアたちとお友だちになりたかったの」
「エミルはずっとさみしい思いをしていた。友だちとはパーティーの時しか会えないのに、城の仕事をばかりさせて。悪い父親だ。すまなかったなエミル」
「お父様、もういいのです。だって、そのおかげでアリアたちと出会えたんですもの。これからは国のために勉強をがんばっていきますわ」
「エマ…エミル姫」
「エミルと呼んでください。ワタシたちはもうお友だちなのですから」
「エミル…!うん、これからもよろしくね」
「はい!あのアリア、また会いに来てくれますか?」
「もちろんだよ。また魔法を届けに来るわね」
「ありがとう、アリア!!」
エミル姫はアリアを抱きしめました。その瞳では涙がきらりと光っています。
外はすっかり夜になっていました。バルコニーから見るルミエール王国はイルミネーションで光輝いています。
「わぁ…!とてもキレイね」
「ルミエール王国のイルミネーションは世界一なのよ。今日は楽しかったわ。アリアたちと冒険して、ケーキを作れて。最高の誕生日になったわ。ありがとう」
「こちらこそありがとう。エミルに最高のクリスマスを届けられて良かったわ。そうだ、ベル。リュックから雲と氷の結晶を出して」
「いいわよ。でもこれで何をするの?」
ベルから雲と氷の結晶を受け取ったアリアは魔法の杖を出しました。
「エミルにもうひとつプレゼントするの」
「もうひとつのプレゼント…!?ねぇねぇ、どんな魔法を見せてくれるの?」
「見てて。雲と氷の結晶よひとつに!Let’s・マジック!スノー・フォール」
雲と氷の結晶が天へと上って、ひとつの雲となりました。雲はルミエール王国に広がっていき、やがて雪が降り始めます。
「雪…!」
「スゴいわアリア!エミルに届けたいって気持ちがアリアの魔法に力をくれたのね」
「ベル、エミル。メリークリスマス」
「メリークリスマス」
魔法が結んだキセキの友情はいつまでも続いていきました。
Let’s・magic!みんな一緒にメリークリスマス!



