朝の光が差し込んできている。
鳥たちがチュンチュンと鳴き、
爽やかな朝を演出している。




夏希はハッと目が覚めた。

部屋の中はいつもの六畳一間、ロフト付き
……では無かった。






灰色と黒をベースにしたシックな部屋。


ギギギと音のなるように首を左に曲げる。
そこには、

「ギャーーーーーー!!!」

夏希が飛び上がる。

それと同時に、バッと起き上がったのは、



佐原だった。


「おおう!! びっくりしたー!!」


二人は何も着ていなかった。


バッと自分の身体を確認する。

「きゃあああ!!」

夏希は慌てて掛けていた布団をかぶる。


ミノムシみたいになったまま、
昨日のことを思い出す。





飲み対決が始まり、
二時間後には二人はべろんべろんになっていた。

そのころには彩香と二階堂は二人でいい感じになり、
消えていた。
帰り際、彩香が何か心配し声をかけてきた気がするが、
夏希の耳には届かなかった。


「なあんで、佐原ばっかりいつも一位なのよう〜」
「そんなこと言うても、
お客さんがついてきてくれとるんや。しゃあないやろ」
「そういうところが、むかつくの~!!」
「伊藤かて頑張っとるやないか。
いつも後追われてるからハラハラしとるで」
「とか言って、いつも余裕で抜いてるじゃん!
うっ……ぐやしー!!」


そこから夏希は泣き始めた。
佐原もそこそこ酔っていたが、
夏希は前後不覚の泣き上戸だった。

「女だから頑張ってるとか、そ~いうの嫌なのぉ~
一人の社会人としてえ、認めてほしい~。エグッ……」
「そうやで、
伊藤が相手やから俺かて手を抜いてないんやで」
「~うう~、さばら~!」

いつの間にか隣にいた佐原が、
遠慮がちに頭をなでる。

いつもは強気に戦っている夏希が、
子どものように泣き、
佐原に縋り付いてきた。

「ええこや、よう頑張っとるで……」
「ええーん、佐原のバカあ~」

こうなると、夏希はいつも彩香にするように
ぎゅうと抱き着き、泣きながら離れなかった。




むにゅうと触れる柔らかな身体。
可愛い泣き顔。
佐原は頭をなでながら、
身体が熱くなるのを感じた。



タクシーで帰る途中も、
離れない夏希に困りつつ、
佐原はとうとう家にお持ち帰りしてしまった。