しばらく佐原……からは連絡が無かった。
共に戦う同期だと思っていた佐原が、社長令息だった。
真剣に思いを伝えてくれて、夏希も佐原が心の真ん中にいるのを感じていた。
だから、帰ってきたら、ちゃんと話そう……と思っていた。
夏希はなんとも言えない気持ちで、毎日を過ごした。
仕事は山のように降ってきて、
上の人も忙しそうに会議をしていた。
それが今はありがたかった。
余計なことを考えなくて済むからだ。
フラフラしながら家に着き、軽い夕食を食べ、シャワーを浴びてベッドに横になる。
最近は毎日こんな感じだ。
時々、スーツのまま寝てしまい、朝びっくりすることもある。
佐原が武者修行に来た理由も分かる。
頑張っていたので、七光りで仕事を取っていたとも思えない。
でも、大元の部分がニセモノだったことが……鉛のように夏希の心に積もっていた。
プルルルルル
ボーっとテレビをあぐらをかいて観ていたら、突然電話の着信音が鳴った。
「……佐原だ」
どうしようと思いながら、慌てて出た。
「……もしもし」
『伊藤!?』
「佐原……あ、違うか、
桜井さんだ」
『あー、バレてもうたのか……』
「……うん」
『……嘘ついててごめんな』
「………」
『あー、もーかっこわる……』
「………やだった……」
『?小さくて聞こえん』
「凄い嫌だった!!嘘つかれてたことが……」
夏希は佐原が電話の向こう側でびっくりするくらいの大きい声で叫んだ。
『……すまんて』
「……なんか全部嘘っぽく思えて、佐原……桜井さんのこと信じられないよ……」
『……俺、親父に認めてもらえるように、東京で身分隠して働いてんねん。大学入る時にな、実は親父と大喧嘩して東京来たんや。やから、会社入った時もオカンの旧姓使わしてもろうて……。まだまだ半人前やねん。伊藤にも伝えなと思うたんやけど、それより気持ちが先に行ってもうて……』
「……ちゃんと言ってほしかったよ。全部嘘に思えて、今、めちゃくちゃ辛いよ……」
『嘘やない!……東京で同期しとった時も、伊藤のこと好きになったんも!!』
「分かんない……分かんないよ!!」
ブチッと電話を夏希は切った。
その後も佐原から何度も着信があったが、夏希は出れなかった。
