犬猿の仲でも溺愛が止まりません!




テニスで遊んだ後、佐原がオススメの定食屋さんに連れて行ってくれた。

「ここがうまいねん!大学時代は毎日通ったわ」
と、ちょっと古ぼけた店を指さす。

[まんぷく食堂]
と書かれた白地に赤い字ののれんがかかっている。



カランカラン


とドアを開けると懐かしいような音がする。


「はい〜いらっしゃ~い」
小太りのおばさんが元気な声で迎えてくれる。

「あら!?部長さんじゃない!?」

と驚く。

「そうやで〜。もう平社員やけど」
と、佐原も笑顔で返す。

「やだわぁ~降格してるじゃない」
とケラケラおばさんが笑う。

夏希はあっけにとられていると、
おばさんが夏希に気づいた。

「あらあら!?可愛い女の子連れて!良い人!?」
と嬉しそうにしている。
「ふふふ〜大事な女よ。でも、まだ口説き途中なんよ」
と、正直に言う。
「ちょっと佐原!」
夏希がたしなめようとすると、
「部長はとってもいい子よ〜口は軽いけど、こんなおばさんにもいつも優しくて!あと三十年若かったら……!!」
と、頬を赤らめる。


「由紀恵!おしゃべりはいいから、お客様お通しして!」
と、キッチンから激が飛ぶ。

「やだわぁ、パパが怒っちゃった。いつもの端っこの席でいいかしら?」
ふふふと笑いながら、席に案内してくれる。


「なんでもうまいねん。でも、俺はしょうが焼き定食がオススメ」
にこにこしながら佐原がメニューを見ている。
「しょうが焼き定食……おいしそう〜。唐揚げも海老フライも捨てがたい……」
夏希は本気で悩んでいる。
「唐揚げも海老フライもうまいで〜」
「くうううぅぅぅ」

おばさんが
「別の頼んで分け合ったら?」
と遠くから声をかけてくる。

(耳がいい!)
と、夏希はびっくりしたが、
「それもええな〜」
と、佐原は通常営業だ。

「わかった!私は唐揚げ定食にする!」
「お!ええな!じゃあ、俺はしょうが焼き定食な!」

すると、
「はい〜唐揚げ、しょうが焼き入りましたぁ」
と、おばさんが元気な声でキッチンに声をかけた。

「はい〜了解〜」
と、野太い声が聞こえた。


水とおはし、おしぼりを配りにおばさんが来た。
「おっちゃんも元気そうやな」
と、佐原が言うと、
「元気よ〜年はとったけど、毎日ジョギング続けてるしね!ご飯は?大盛りも無料よ」
と、言うと、
『大盛りで!』
と、二人の声がかぶった。
「彼女も沢山食べてってね!」
と、おばさんはウインクしながらキッチンに向かっていった。



出てきた唐揚げ定食もしょうが焼き定食もめちゃくちゃ美味しかった。

ジュワジュワと湯気が立ち、
いいきつね色の唐揚げと、生姜がピリッと聞いて染み染みのしょうが焼き。

「ううう〜美味しい〜!!」
と、夏希は沢山頬張り、佐原のしょうが焼きもちゃんと交換して、ご飯もしっかり平らげた。

佐原は、にこにこしながら夏希を見ていた。
そして、ボソッと、
「良かったわ。伊藤が沢山食べる姿見れて」
と嬉しそうに言った。
「かわええな」
と、ポンと頭を撫でた。