夏希が借りたのはポロシャツとスコートの組み合わせ。
自分では絶対選ばないピンクを基調とした可愛い服だ。
色々あったが、Sサイズの夏希にはどれも大きく、この可愛いのしかなかった……。
(ミニスカートみたいじゃん〜!!)
モジモジしながら佐原の前に立つと、
佐原がそれはまぁいやらしい顔でニヤけた。
「めっちゃええ、におうとる……」
「バカ!見んな!」
「いや、これから戦うんやで。見るわ!」
そんなやり取りをしながら、夏希は佐原を見る。
白を基調としたポロシャツとハーフパンツの組み合わせだ。
口を開かなければ、きっと爽やかでコートの王子様だろう。
(大学時代もめちゃくちゃモテたんだろうなぁ……)
と想像し、夏希はムカッとした。
そんな自分にハッとしたが、
(これは単純にそういう状況でヘラヘラしてた佐原が気に入らないからだもん!)
と心を切り替えた。
「さぁて、夏希チャン、ルールはご存知かなぁ?」
「は?やったことないから全然分からないよ!打つところから教えて」
と、ムカムカをそのままに返事してしまった。
「わぁーった!そう怒らんでよ。それでは、大学時代テニス部の部長だった、俺様がしっかり丁寧に教えたるわ」
と、なんだか偉そうに言ってきた。
そして、悔しいことに佐原は教え方がめちゃくちゃ上手だった。
ラケットの持ち方、身体の重心の取り方、足の踏み込み方、ボールの打ち方、夏希を褒めながら丁寧に教えてくれて、1時間もすると、遊ぶ程度にはできるようになった。
「やっぱり伊藤は元野球部だけあって、筋力も勘もええわぁ」
そう言われると夏希も悪い気はしない。
「そう?」
「ボールは野球みたいに上に上げたらあかんで。相手のコートに叩きつけるんや」
佐原は軽くポンッとボールを左手で上げて、右手でラケットを振り、相手のコートにズバンと入れる。
「これがサーブや」
(……クソ……カッコいい……)
夏希は心の中で悪態をつきつつ、佐原に見とれた。
「なるほど……バレーボールみたいだね」
平然とした顔で言うと、
「おお、そうやな。そんな感じで打ってみ!」
と夏希にボールを渡してくれる。
夏希も佐原の真似をしてやってみる。
しかし、どうも上手くいかない……。
バンッ!
「おーホームランーー!!」
佐原が呑気な声を出す。
ボールは高く飛んでいく。
「む、難しい……」
「ええやん!女子でこんな綺麗に打つの見たこたないわ」
と嬉しそうに笑う。
「伊藤のバッティングも今度見せてな!」
何度失敗しても、ホームランと言って夏希の良さを褒めてくれる。
最初は、からかってるのかと思ったが、佐原は夏希のことを知ることができるのが心底嬉しいようでニコニコしている。
自分を認めてくれている……その喜びが、知らぬ間に夏希の心を少しずつ溶かしていた。
