犬猿の仲でも溺愛が止まりません!




その頃、夏希と佐原は観覧車に乗っていた。


「わぁぁぁー!!見て佐原!!アドベンチャーステージが見えるよ!!」
「あかん、下見たら死ぬ」
「めちゃくちゃ綺麗!」
「……良かったわ。泣きやんでくれて」
「……な、泣いてないもん!」
「うそやて。観覧車乗るまで泣いとったやないか」
「……あ!ホイッスルマウンテンだ!」
「なんやて。お嬢さん、無視かいな」

夏希は、なかなか見られない観覧車からの景色にうっとり。
佐原は、高いところが苦手なのか斜め下ばかり見ていた。
長い脚を組んで、一見グレてるようだ。



「……ナツキチャン、そろそろ考えてくれたん?」
と、佐原が急に話し始めた。

「……え…っと……」
すると、ずいと顔を近づけ、
「今日も楽しかったやろ?俺と付き合うても、楽しめるんとちゃう?」
と、息がかかるような近距離で追い詰める。

「あ、あのね、考えてはいるんだけど、まだ……」




「なぁ……何が怖いん?」


真面目な声色で佐原が問う。


「えっちも先にしてもうて、一緒に居ても嫌な感じせえへんし、俺のこと嫌いではないんやろ?」
「ちょっ!」
「……俺も一緒に考えたい。考えさせてくれへんかな?」





佐原の真剣な眼差しに、夏希はモジモジしながら話し始める。


「……私今まで男子に負けないと思って頑張ってきたの……。だから、誰かと付き合うとか考えられなくて……でも、佐原のこと、嫌い……じゃないの」

「あーびっくりした!そこで、息吸うなや!」
と、突っ込む。

「あぁ、ごめん。……なんて言っていいか分からないんだけど、佐原と付き合ったら、女の子扱いされて、頼っちゃって、自分じゃなくなっちゃう気がして、怖いの……」

すると、佐原は頭をボリボリ掻き始めた。
「あーー!そうなん!……じゃあ、職場で優しくしたんは、逆効果やってんか!」

すると観覧車がグラッと揺れた。
「おっと!」
佐原が慌てて椅子に掴まる。

「……佐原が頭掻いて暴れるから……」
「俺やって、喜ぶ思ったんや!」
「……ごめん」

観覧車も終わりに近づこうとしている。


「……恋愛したって、伊藤は伊藤なんやないの?」
「え」
「伊藤は伊藤だから俺は好きになったんやで」
「……」

じっと見つめると、佐原が叫んだ。
「あー!!俺にチャンスくれ!」
「へ!?」
「今度二人でデェトしよう!!俺かて職場では何もできんし、もっと伊藤と話したいねん!そうせな、何も解決せえへんと思うんや……」

なんでそこでデートなんだと夏希は思ったものの、確かに話したり会ったりするのはやってみてもいいかもしれないと、なんとなく思えた。

「……わかった」
「マジで!!やった~!!一歩前進やな!」

と、佐原が立ち上がり、再び観覧車が揺れたので、
佐原は青白い顔をして、椅子に張り付いた。





とこんな感じで夏希と佐原は一歩前進したが、
もっと進んだ二人がいた。


「えええ!付き合うことになったんか!!!」
「てへ♡」
「彩香ちゃんのボールに心撃ち抜かれちゃった♡」
と、樹と彩香がラブラブしながら合流して、
佐原が叫び、
夏希はあっけにとられたのは閉園直前のことだった……。