きゃあぁぁぁぁぁ〜!!


大きな叫び声とともにジェットコースターが急降下する。
夏希は、両手を挙げて。
彩香は、笑顔で。
樹は、やや引きつっている。
佐原は、深く頭を下げて……画面からいなかった。


「ギャハハハハ!!」

丁度落ちる瞬間を捉えた写真を見て、夏希は大爆笑。

「うるせぇわ。久しぶりだから写真があるなんて分からんかったんや!!」
「そんなこと言って〜本当はジェットコースター苦手なんじゃないのー?」
「はぁ?そんなビビリやないわ!」
「じゃあ、もう一回乗ろう!!」
「あかんわ!」
「アハハハハ!!」


「二人が楽しそうで良かったぁ〜」
ちょっと離れたところで、ディスティニーランド特製いちごチョコジュースを飲みながら彩香がボソリとつぶやいた。
「涼司がジェットコースター苦手だったなんて、意外。それにしても、彩香ちゃんの綺麗な笑顔とピース……スゲェ」
「えっ、綺麗?嬉し〜!」
褒められたわけではなさそうだが、彩香は頬を染めている。


「彩香!!次はこれ乗りたい!!」

夏希が目をギラギラさせて大きな声で向かってきた。
あれがこれでここではこれを食べたいなどと、まくし立てる。
「もぉ~モンチ声大きすぎ!うるさー!なんか〜全体的に小学生みたいっ!」

今日の夏希の装いはハーフパンツにティシャツ、そして、野球帽という身軽なものだ。
反して彩香は、プリプリとしたフリルがある上下に白いスニーカーで女の子らしい服装だ。

「ディスティニーランドのガチ勢はスカートなんか履かないのっ。動きやすいのが一番なんだから!」
「でも、今日はダブルデートなんだよぉ!」

ギシッ

変な音が夏希から聞こえた。しばらく静止したかと思うと、
「今日は忘れて楽しむのっ!!」
と、ダッシュで目的地に向かって走り始めた。




今日、夏希は、待ち合わせに着いたとき、
実はめちゃくちゃ緊張していた。

佐原とまともに話すのいつぶりだろう……何話したらいいのかなとか思うと、昨日はよく眠れなかった。

一番に到着したかと思ったら、待ち合わせの場所には佐原が立っていた。
ドキリとして、夏希は足を弱めた。

すると、佐原が夏希に気づき、
「お~い!遅いやん」
と普通の口調で話しかけてきた。
「お、おはよう」
少し挙動不審の夏希に、おもむろにバッグから何かを取り出して夏希の頭にかけた。

「うぎゃっ」

「よぉ似おうてる!!アハハハ!」
と、言って慌てて夏希が見ると、
「ディスティニー30周年のカチューシャだぁ!……なんでモンキーのなの……」

ディスティニーランドのキャラクターの中でもレアな猿のカチューシャだった。大きな耳がカチューシャの下の方に付いていて本当にさる

「やっぱりモンチ♡には猿が似おうと思てな!」
「なんだとー!!」

佐原にグーパンしようと拳をあげる。

「今日は楽しもな!」
佐原がニカッと笑った。
「俺はディスティニーランド初めてやさかい、色々調べてきたで〜!」
携帯に何やらメモを書いているのが見えた。

佐原が楽しもうとしてくれてる……そのことに夏希は不安な気持ちが吹っ飛んだ。

「もちろん!!私はディスティニーランドガチ勢だから色々教えてあげるねっ」
「俺の知識に勝てるか〜」

なんて二人で話しているうちに、彩香と樹が来た。