佐原の思いを聞き、夏希はもんもんと悩んでいた。
職場では何かと佐原が優しい。
資料室に行って思い資料を運んでいると、
「それ持ったるよ」
と、やたら笑顔でやってくれる。
今までは
「おー、重たそうやな。
伊藤が本に埋もれて見えへんな〜」
とか言って、
小さいのをバカにして絶対手伝ってくれなかった。
残業してる夏希がトイレから帰ってくると、
机の上にちょこんとカフェ・ラテが……。
メモには
『はよ帰れ〜』
の文字。
とにかくあちこちで優しい佐原がチラホラ現れて、
夏希のムズムズが止まらない……。
ゴクッゴク……ゴクゴクゴクゴク
「っぷはぁぁぁぁぁぁ!」
夏希は、重いビールを居酒屋の机に荒く置いた。
「やぁだぁー怖いぃ〜!
モンチ!もうちょっと可愛くしなよぉ」
隣で彩香がブリブリして言う。
「もー!耐えられない!!」
「何が?」
「佐原よ!
あれからめちゃくちゃ優しくしてきて、
キモイったらありゃしない!!」
夏希は、寒くもないが二の腕を両手で触って震えている。
「えー、
あのイケメンにそんなこと思うのモンチくらいだよぉ」
「何かあればすぐ飛んできてニッコリ笑って……
なんなのアイツ……キモい、キモすぎる!!」
「ホントは、嬉しいくせに〜」
ギックリと彩香を睨んで、
「いや、ない。マジ無い」
と言う。
「最初は、ありがとって思ってたよ……。
だけど、それがこうも1週間も続くとサブイボ出まくる!!」
「夏希、女の子扱いされるの慣れてないもんねぇ〜。
佐原くんって、結構デロデロに溺愛するタイプだったんだぁ」
「いやーー!甘すぎて耐えられないよ!!」
夏希は、机に伏せってしまう。
「えーじゃあ、佐原くん好きじゃないのぉ?」
「……いや、それは分からない」
急にモジモジする夏希。
「ふーん。佐原くんまだ敗退ってわけじゃないんだぁ。
じゃあ、喜んで受け取ればいいじゃん。
彩香は、お姫様扱い嬉しいけどなぁ〜」
「いや、それは勘弁してほしい!」
「えー、じゃあ、どうしたいのよぉ」
「……そ、それは」
「もおっ。頭まで筋肉でできすぎっ!」
彩香はコツンと人差し指で夏希の頭をを小突く。
「だって~アイツは私にはライバルなんだよっ!
今までそうとしか思ってなかったのに、
急に態度変えられても……困るよ……」
夏希は、モニョモニョ言いながらどんどん沈んでいく。
