伊藤夏希と出会うたころ、俺はちょっと調子に乗っとった。

関西では当たり前のことも、
東京モンはシャイなのかできへん。

周りを気にせんで、どんどん話に行ったら、
最初は皆構えるけど、
オモロイと気づいたら大事にしてくれる。

東京の大学に進学すると、
女の子たちも俺がニコッと微笑むと、
カッコいいとか言うてすぐホイホイ着いてきた。

だから、伊藤が突っかかってきた時、
なんやと思うて、
最初はからかってやろ!くらいの気持ちでいた。

でも、あいつは負けん気が強くて、
一生懸命勉強してきて、
……正直焦った。


どうせなら東京で天下取って、
大阪本社に帰りたいとほんまに思た。


それからは女の子と遊ぶのもやめて、
営業のことを学んだ。

3年経っても、
仕事が楽しいんは……伊藤がおるから。


キーキー歯向かう姿も、
だんだんかわええと思うよになってきて……
頭ではあかんと思たけど、
ついに欲望に負けてしもうた。


あの男勝りが慣れてるわけないと思うてたが、
まさか初めてやったなんて……

そして、
その恥じらいながらも甘えてくる姿のかわええこと!



ずっと好きだったんやと言うつもりはない。

手を出してから、
めちゃくちゃかわええ、
絶対繋ぎ止めたいと思うようになった。

土日は、伊藤のことを思い出し、
なんて話しかけよとずっと考えてた。
あれだけダッシュで逃げた言うことは、
パニックになってるはずや。

でも、このまま無かったことにはできへん。

もう伊藤の柔らかな部分を知ってしもうたから……。


浅はかかも知れへんけど、
酒の席でこんな失敗したことなかった自分を思うと、
伊藤が前から特別だったことは間違いない。

伊藤が信じてくれるまで、
これは本気でほんまもんの思いを伝えるしかないなと。