母はいつも夫や達也に甘く、
自分のことは後回しだ。
そして夏希には
『女の子なんだから』
というワードが多い。
昔は髪の毛を伸ばし、
お人形さんのような恰好ばかりさせられていた。
小学校までは、
美少女……と言われていた。
それが耐えられず、
中学校から野球を始めて、
髪を短く切り、
男の子のような服装をするようになった。
走ったり、鍛えたり、
泥だらけになって友だちと練習に励むのは
とても気持ちが良かった。
夏希のなりたい自分になれた気がする。
母のことは嫌いではない。
夫や子どもたちのことを思い、
楽しく愛のある毎日を過ごしているとも思う。
就活していた時、色々話したが、
母とは意見が対立した。
ケンカはしてはいないが、
結局この仕事を選んだ自分を、
母はいつも心配している。
ゆる~く働き、
素敵な旦那様を見つけてほしいというのが
本音なんだよな……と毎回会うたびに感じる。
営業職でバリバリに働いている夏希は、
父の仕事にも近いはずだが、
父からは何もアクションはない。
父の関心も自分にはないと感じていた。
大学で野球をしている時も、
母は女の子なのに泥だらけで……、
とか、
傷ばっかりつくって心配……嫁の貰い手があるかしら。
とか、
の発言が多かった。
夏希には苦しく、
真綿のように絞められる感覚があった。
男、女……を意識すればするほど、
夏希は男には負けられないと思うようになり、
恋愛からは離れていった。
はずなのに……!!
「……でね!
夏希??聞いてるの?」
例によってパパが~とかたっちゃんが~と
話していた母が夏希の返事がないのを咎めた。
「聞いてる聞いてる~!
今日は疲れたから、またね!
暇な日できたらフラッと帰る~」
と、あいまいな返事をして切ってしまった。
