たった3年前のことなのに、
ずいぶん昔に思えてくる。

何を言われるんだろうか……

混乱とともに現れるのは、
今の関係性を変えることへの恐怖だ。
今までたぶん対等に戦ってきた。


………これからは?


そんなことを考えながら、
会議室に着いてしまった。




ガチャ……




扉が鳴る音が響く。



窓の外を振り返った佐原がバッと振り返った。



「伊藤!!


……良かった。来てくれたんやな。
夕方は、営業出てしまったら話できんと思て」


ホッとしたように笑う佐原の顔を見ると、
一気に緊張感が増した。
ドキドキして、手が冷たくなるのが分かる。




「あんな……」

急に佐原の顔が凛々しくなり、
バッと頭を下げた。




「金曜日はすまんかった……!!」

「え……」

謝られるとは思わなかったので、
夏希はびっくりした。

「お互い酔ってたしな、
伊藤が初めてなんて知らんと……」

佐原はまだ顔を上げない。




ああ……佐原は、私が初めてだったことを知って、
申し訳なく思ってるんだ……
と、胸がギュッと痛んだ。


何を言い淀んでいるのかと、
思っていると、

今度は勢いよく顔を上げ、
がっしりと夏希の肩を掴んできた。



「お、俺!!!
伊藤が好きや!!!

付き合ってくれへんか!?」




「…………へ……??」


……夏希はあまりに驚いて、
頭が真っ白になった。


優しそうな微笑みをして、
「伊藤、俺が幸せにしたる……」
と、そのままくいと引き寄せられた。


夏希は佐原の顔が近づいてくるのを感じると、




「ば、
ばっかじゃなーーい!!!」


バッチーーーーン!!



と、右手でフルスイングを効かせた
張り手を佐原に食らわせた。


………ドタンッ



と、佐原がふっ飛ばされ、
尻もちを付いていた。


「なーんで、佐原と付き合わなきゃいけないのよ!
そ、そういう責任取る!?みたいなことしないで!


ぜっったい!
私は佐原とは付き合わないっっ!!!」


荒い息をして、夏希が吠えると、
佐原は数秒置いて、



「いってぇぇえ!!!」


と頬を手のひらで押さえて、
痛みにのたうち回った。




「おまえなぁ!!
なんでどつくんや!!」


今まで愛おしそうにうっとりしていた男
とは思えないツッコミだ。