ドキドキ胸が高鳴る。
頑張ったよね……私。
周りの同僚たちの息を呑む音が聞こえる。
太った部長が紙を開く。
「えー、今月の営業トップは〜」
………ごくん
「佐原やで!!ようやったな!」
ガクッ………。
おおー!とざわめきとともに拍手が巻き起こる。
そこにすっと一歩出た男は、
「ありがとございます!
皆さんのご協力のおかげやわ」
ニッコリと太陽のような微笑みで頭を下げた。
佐原涼司25歳。
顔立ちよく、
ゴールデンレトリバーのような親しみやすさと
関西人らしいコミュ力の強さで人気がある。
顧客からも……。
事務方の女子からは、
「やだー、涼司クン素敵〜」
と黄色い声があがる。
奴はくるりとこちらに向き、
「今月も取らせてもろたわ。伊藤、悪いな!」
と、意地の悪い笑顔を向けてきた。
伊藤夏希、同じく25歳。
桜井商事の営業畑でバリバリ働き、
今月1位を目指していた。
東京生まれだが、1LDKに一人暮らししている。
元野球部で負けん気の強さは織り込み済みだ。
顔立ちは可愛いが、いつもギラギラしているので
男の子からはモテない。
外に出て暑い中でもすぐタオルで拭ける!
という理由でいつもボブ。
身長も153cmと小さくいつもヒールを履いているが、
全体的に小さい。
あっちやらこっちやら……。
夏希は、ギリッと奥歯を噛み締め、
「次はその息の根止めてやるからね!」
と、佐原の喉元に人差し指を向けて宣戦布告した。
バッドのつもりかもしれない……。
「へへっ、やれるもんならやってみいや!」
にやりと笑う佐原。
奴は身長が178cmある。
佐原の前ではより下に見られ、
より負けてられないという闘志が燃える。
二人で睨み合っていると、
部長が、
「伊藤くんも第二位とよく頑張ったやんな。
佐原とは大差つけられてんけど。
そう怒らんと、次頑張り!」
と、ポヨポヨしながら
夏希の傷を抉るようにフォローしてくる。
「……た、大差」
夏希はポツリと呟いた。
