扉は、ぎい、と音を立てて、ゆっくりと開いた。
中に入ったとたん、わたしは息をのんだ。
——そこには、まるで夢の中のような空間が広がっていた。
天井が高くて、丸いステンドグラスから色とりどりの光が差しこんでいる。広い部屋の中には、本棚がぐるりと並び、どの棚にも見たことのない古い本がぎっしりと詰まっていた。
壁の時計は止まったまま。静かで、時間がとまってしまったみたい。でも、ぜんぜん怖くはなかった。むしろ、心がわくわくして、足が勝手に前へ進んだ。
「ここって……本当に、図書室の、奥……?」
でも、いくら図書室が広くたって、こんな空間があるわけない。これはもう、別の場所——いや、まるで別の世界だ。
本棚のあいだから、小さな風が吹いてくる。ページがぱらりとめくれたり、カーテンみたいに本の背表紙がゆれて見えたりした。
わたしはそっと、いちばん近くの棚に歩みよった。
そこに並んでいたのは、すべて革張りの古そうな本。どれも重たくて、表紙にはなにか銀色の文字が書かれている。でも、その文字は、見たこともない言葉だった。
そのとき、ひときわ目を引く本を見つけた。
それは、真っ白なカバーに包まれていて、表紙には小さく、こう書かれていた。
『七瀬ひかりの物語』
——えっ?
思わず、声が出そうになった。
わたしの名前……? 本のタイトルに?
まちがいじゃない。しっかり、黒いインクで書かれていた。
手をのばして、その本にそっと触れた瞬間——。
ぐらり、と足もとが揺れた。
「きゃっ……!」
目の前がぐにゃりとゆがんで、視界が白くかすむ。本が、光を放った? わたしの体がふわっと浮いて、風にのるように持ち上げられる。
「な、なにこれ……!?」
気がつくと、わたしはもう、本のある部屋にはいなかった。
まるで本の中に吸いこまれるようにして、別の世界へ落ちていった——。
中に入ったとたん、わたしは息をのんだ。
——そこには、まるで夢の中のような空間が広がっていた。
天井が高くて、丸いステンドグラスから色とりどりの光が差しこんでいる。広い部屋の中には、本棚がぐるりと並び、どの棚にも見たことのない古い本がぎっしりと詰まっていた。
壁の時計は止まったまま。静かで、時間がとまってしまったみたい。でも、ぜんぜん怖くはなかった。むしろ、心がわくわくして、足が勝手に前へ進んだ。
「ここって……本当に、図書室の、奥……?」
でも、いくら図書室が広くたって、こんな空間があるわけない。これはもう、別の場所——いや、まるで別の世界だ。
本棚のあいだから、小さな風が吹いてくる。ページがぱらりとめくれたり、カーテンみたいに本の背表紙がゆれて見えたりした。
わたしはそっと、いちばん近くの棚に歩みよった。
そこに並んでいたのは、すべて革張りの古そうな本。どれも重たくて、表紙にはなにか銀色の文字が書かれている。でも、その文字は、見たこともない言葉だった。
そのとき、ひときわ目を引く本を見つけた。
それは、真っ白なカバーに包まれていて、表紙には小さく、こう書かれていた。
『七瀬ひかりの物語』
——えっ?
思わず、声が出そうになった。
わたしの名前……? 本のタイトルに?
まちがいじゃない。しっかり、黒いインクで書かれていた。
手をのばして、その本にそっと触れた瞬間——。
ぐらり、と足もとが揺れた。
「きゃっ……!」
目の前がぐにゃりとゆがんで、視界が白くかすむ。本が、光を放った? わたしの体がふわっと浮いて、風にのるように持ち上げられる。
「な、なにこれ……!?」
気がつくと、わたしはもう、本のある部屋にはいなかった。
まるで本の中に吸いこまれるようにして、別の世界へ落ちていった——。
