金曜日の放課後になって、その日塾のなかった朱李ちゃんと一緒に帰っていた時のこと。わたしは、野崎くんと一緒に人捜しをすることになったと朱李ちゃんに報告した。
「えっ……ええっ!?」
「あ、朱李ちゃん、声が大きいっ」
「あ……ごめ~ん」
既に学校を出ているとはいえ、誰が見ているか聞いているかわからない。慌てて「しーっ」と口元に人差し指をあてれば、朱李ちゃんも口を手で覆ってくれた。
「こっちがびっくりしたよ、もう」
「ごめんて。でも、びっくりしたもん。野崎くんが、ねぇ」
何となく、朱李ちゃんの表情が意味深に思えるのは気のせいかな。あまり深く考えることはせず、わたしはその経緯を簡単に話した。とはいえ、わたしも何で野崎くんがわたしに声をかけたのかはわからないけれど。
「とにかく、捜してる人を街で見かけたら教えてくれっていう頼みを受けただけなんだけどね」
「それでも、ちょっと気を付けた方が良いかも。ほら、知っての通り、野崎くんって人気者だから……」
「わかってる」
今日も休憩時間、女の子たちが野崎くんと青山くんの周りにいた。楽しそうに見えたから声をかけることはなかったんだけど。
(ちょっと残念、だったかも?)
一緒に帰った放課後から、まともに顔を見て話せていない。わたしから話しかけに行くのも今までしたことがないから変だし、どうしようかと思っていたら数日経っていた。……何で残念なんだろう。まあ、いいや。
「一緒に行動することとかはないと思うし、大丈夫じゃないかな。わたしだって、他の女子ににらまれたくないもん」
「ん~、まあ、そうだよね。多分大丈夫かな」
「朱李ちゃん?」
「何でもないよ。でも、見付かると良いね。野崎くんの捜し人」
「うん。そう、だね」
若干歯切れが悪くなってしまったのは、わたし自身が捜し人が見付からないと知っているから。それにわたしが人助けをしなければ、野崎くんに見付かることはないから。いつか、諦めてくれるだろうと思う。
「そういえば今日、理科の時にさぁ……」
何となくこの話をこれ以上したくなくて、わたしは話題を変えた。朱李ちゃんは特にそこには突っ込まずにいてくれたから、話題はそのままスライドしていく。
それからいつも通りの場所でしばらく駄弁って、ばいばいして別れた。
☆
その日の夜、朱李ちゃんとメッセージのやり取りをしていた時のこと。喉が渇いて水を飲みに行って戻って来ると、通知が二件来ていた。一つは朱李ちゃんで、もう一つは……。
「野崎くん? どうしたんだろ」
わたしはまず朱李ちゃんのメッセージに返信して、野崎くんのメッセージを確認した。
「えっと……」
『角田、こんばんは。夜にごめんな。明日と明後日、どっちか時間貰えないか?』
「土曜か日曜? うーん『どっちでも空いてるよ。どうしたの?』」
返信を送ると、数分で既読が付いて再びメッセージが送られて来る。
『マジで? よかった。じゃあ、土曜日に俺と一緒に手掛かり探しをしてくれないか?』
「え……ええっ!?」
思わず叫ぶと、リビングからお母さんが「どうしたの?」と聞いてきた。それに「動画を見ていてびっくりしたの」と言い訳して、わたしは改めてスマホの画面を凝視した。
(これ、どういうこと? いや、自意識過剰良くない。多分これは、他に青山くんとかいるやつ。絶対そう)
誰に何を説明しているのかわからないけれど、わたしはそう考えて納得した。そして、少し考えてから返信を打つ。
『いいけど……見付かるかなぁ?』
『それはわかんないけど、それ抜きでも俺は角田と遊んでみたいんだ』
「な、何でわたし……? わたしより、田村さんとか峰野さんとか、可愛い子たくさんいるじゃん……」
戸惑いは相変わらずだけど、わたしは野崎くんの誘いを受けることにした。土日は何も用事がなかったし、宿題は今日ほとんど終わらせている。だから、何も問題はない。
一つ深く深呼吸して、頭を切り替える。クラスメイトと遊ぶ、ただそれだけだ。
『わかった、いいよ』
『さんきゅ。そしたら午前と午後、どっちがいい? 昼を一緒に食うか先に食って来るか』
『午前中からの方が、たくさん調べられそうだね。野崎くんはどう思う?』
『じゃあ、十時半くらいに駅前集合で』
『了解』
約束をして、わたしたちは『また明日』と会話を終わらせた。
「……うん、明日は普通に遊ぼう。捜し人は、見付かるはずないんだから」
わたしが怪力であることがバレなければ、大丈夫。そう思い直して、わたしは朱李ちゃんからのメッセージに返信した。
「えっ……ええっ!?」
「あ、朱李ちゃん、声が大きいっ」
「あ……ごめ~ん」
既に学校を出ているとはいえ、誰が見ているか聞いているかわからない。慌てて「しーっ」と口元に人差し指をあてれば、朱李ちゃんも口を手で覆ってくれた。
「こっちがびっくりしたよ、もう」
「ごめんて。でも、びっくりしたもん。野崎くんが、ねぇ」
何となく、朱李ちゃんの表情が意味深に思えるのは気のせいかな。あまり深く考えることはせず、わたしはその経緯を簡単に話した。とはいえ、わたしも何で野崎くんがわたしに声をかけたのかはわからないけれど。
「とにかく、捜してる人を街で見かけたら教えてくれっていう頼みを受けただけなんだけどね」
「それでも、ちょっと気を付けた方が良いかも。ほら、知っての通り、野崎くんって人気者だから……」
「わかってる」
今日も休憩時間、女の子たちが野崎くんと青山くんの周りにいた。楽しそうに見えたから声をかけることはなかったんだけど。
(ちょっと残念、だったかも?)
一緒に帰った放課後から、まともに顔を見て話せていない。わたしから話しかけに行くのも今までしたことがないから変だし、どうしようかと思っていたら数日経っていた。……何で残念なんだろう。まあ、いいや。
「一緒に行動することとかはないと思うし、大丈夫じゃないかな。わたしだって、他の女子ににらまれたくないもん」
「ん~、まあ、そうだよね。多分大丈夫かな」
「朱李ちゃん?」
「何でもないよ。でも、見付かると良いね。野崎くんの捜し人」
「うん。そう、だね」
若干歯切れが悪くなってしまったのは、わたし自身が捜し人が見付からないと知っているから。それにわたしが人助けをしなければ、野崎くんに見付かることはないから。いつか、諦めてくれるだろうと思う。
「そういえば今日、理科の時にさぁ……」
何となくこの話をこれ以上したくなくて、わたしは話題を変えた。朱李ちゃんは特にそこには突っ込まずにいてくれたから、話題はそのままスライドしていく。
それからいつも通りの場所でしばらく駄弁って、ばいばいして別れた。
☆
その日の夜、朱李ちゃんとメッセージのやり取りをしていた時のこと。喉が渇いて水を飲みに行って戻って来ると、通知が二件来ていた。一つは朱李ちゃんで、もう一つは……。
「野崎くん? どうしたんだろ」
わたしはまず朱李ちゃんのメッセージに返信して、野崎くんのメッセージを確認した。
「えっと……」
『角田、こんばんは。夜にごめんな。明日と明後日、どっちか時間貰えないか?』
「土曜か日曜? うーん『どっちでも空いてるよ。どうしたの?』」
返信を送ると、数分で既読が付いて再びメッセージが送られて来る。
『マジで? よかった。じゃあ、土曜日に俺と一緒に手掛かり探しをしてくれないか?』
「え……ええっ!?」
思わず叫ぶと、リビングからお母さんが「どうしたの?」と聞いてきた。それに「動画を見ていてびっくりしたの」と言い訳して、わたしは改めてスマホの画面を凝視した。
(これ、どういうこと? いや、自意識過剰良くない。多分これは、他に青山くんとかいるやつ。絶対そう)
誰に何を説明しているのかわからないけれど、わたしはそう考えて納得した。そして、少し考えてから返信を打つ。
『いいけど……見付かるかなぁ?』
『それはわかんないけど、それ抜きでも俺は角田と遊んでみたいんだ』
「な、何でわたし……? わたしより、田村さんとか峰野さんとか、可愛い子たくさんいるじゃん……」
戸惑いは相変わらずだけど、わたしは野崎くんの誘いを受けることにした。土日は何も用事がなかったし、宿題は今日ほとんど終わらせている。だから、何も問題はない。
一つ深く深呼吸して、頭を切り替える。クラスメイトと遊ぶ、ただそれだけだ。
『わかった、いいよ』
『さんきゅ。そしたら午前と午後、どっちがいい? 昼を一緒に食うか先に食って来るか』
『午前中からの方が、たくさん調べられそうだね。野崎くんはどう思う?』
『じゃあ、十時半くらいに駅前集合で』
『了解』
約束をして、わたしたちは『また明日』と会話を終わらせた。
「……うん、明日は普通に遊ぼう。捜し人は、見付かるはずないんだから」
わたしが怪力であることがバレなければ、大丈夫。そう思い直して、わたしは朱李ちゃんからのメッセージに返信した。
