「こ、こんにちは!」
「はい、こんにちは」
突然現れた透矢くんのおばあさんに驚いたわたしだけど、野崎くんも焦っていた。
「な、何でこんなとこにいるんだよ、ばあちゃん!」
「たまには運動しないと、と思ってね。透矢ちゃんは出かけたから、のんびり歩いてたのよ」
「にしたって、駅の反対側までか……。ばあちゃん健脚だな」
「ふふ、ありがとう」
まんざらでもなさそうなおばあさんは、わたしの顔をじっと見て首をかしげる。
「あら、あなた……」
「あ、えっと……」
「ばあちゃん、クラスメイトの角田だよ。ばあちゃんを助けてくれた人捜しを手伝ってくれてるんだ」
思わず視線をさまよわせるわたしを、野崎くんが助けてくれる。紹介してもらって、わたしはようやく「クラスメイトの角田水月です」と名乗ることが出来た。
ほっとしたわたしを眺めて、おばあさんは「あらあら」と楽しそうに微笑んだ。
「あなたが水月ちゃんね。透矢ちゃんからお噂はかねがね」
「へ?」
「ばーちゃん!!」
頼むから、余計なことは言わないでくれ。顔を赤くして頼む野崎くんに、おばあさんは「わかってるわよぉ」とくすくす笑う。笑い方というか、表情が野崎くんとよく似ている。野崎くんが、おばあさんに似たのかな。
「そういえば、あなたたち何処かに行く途中だったんじゃない? 邪魔してしまったわね」
「いいえ、色々見ていただけなので……。大丈夫ですよ」
「ありがとう。それじゃあ、透矢ちゃん。ゆっくり帰ってきたら良いわ」
「ばあちゃん……。角田をそんなに連れ回せないよ。夕方には帰るから」
「ふふ、わかったわ。水月ちゃん、またね」
「あ、はい。また。お気をつけて」
野崎くんのおばあさんを見送って、角を曲がって見えなくなる。すると、野崎くんが大きく息を吐いた。
「はぁ……びっくりした……」
「本当に。でも、笑顔の素敵なおばあさんだね」
「へへ、ありがとな。ばあちゃんも喜ぶよ」
野崎くんのはにかんだ笑顔に、どきっとさせられる。彼はおばあさんが去った方をちらりと見てから、わたしに「行こうか」と促した。
「喉かわいてないか? 俺はかわいた」
「おばあさんに会っちゃったもんね。フードコートあるみたいだし、そこで休憩する?」
「賛成」
わたしたちは商業施設の四階にあるフードコートに入って、それぞれ飲み物を買った。自動販売機があったから、わたしはリンゴジュース、野崎くんは炭酸を買う。
「付き合ってくれてありがとな、角田」
無事に席を確保して、わたしたちは向かい合って座る。缶を開けて一口飲んだ後、野崎くんはそう言って笑った。
「何度も誘うのは迷惑かとも思ったんだけど……」
「そんなことないよ。野崎くんと遊ぶの楽しいから……。あ、勿論、人捜しもしないとなんだけど!」
「あはは。いいよ、それで。角田が楽しいって思ってくれるなら、誘ってよかったと思うし」
けらけら笑った野崎くんは、いつの間にか取っていた館内パンフレットをテーブルの上に広げる。覗き込むと、スルーしてきた三階や他の階にも色々なお店が入っていることがわかった。
「この後、どうする?」
「そう、だね……」
館内地図を眺めながら、今更わたしはドキドキしていた。これ、デートみたいじゃない?
(いやいや、うぬぼれたらダメだ。野崎くんは、あくまでおばあさんを助けた人を捜したい……んだよね?)
少しだけ、期待してしまう自分がいる。わたしを見る野崎くんの視線に、別の意味を探したくなる。でも、それはダメだと自分に言い聞かせる。
(出来るだけ、人が集まりそうなところが良いよね。聞き込みとか出来そうな……)
「あ、ここは?」
「どこ?」
考え込んでしまっていたわたしは、野崎くんの声に引き戻される。彼が指差す場所を見れば、そこには『イベントスペース』と書かれていた。
「イベントスペース……?」
「今は、『小さな水族館』っていう企画をやってるみたいだ。行ってみないか?」
「……うん、行きたい」
「じゃ、決定な」
柔らかく笑った野崎くんは、炭酸をペットボトル半分くらい飲んでいる。対するわたしは、リンゴジュースがまだ三分の二くらい残っていた。
「ごめん、早く飲むね」
「良いよ。急がなくても、水族館は逃げないから」
野崎くんはそう言って、青山くんと盛り上がった話題について話してくれる。どうやらクラスに先生のモノマネが得意な男子がいるらしく、彼を真似てモノマネをしてみたら、全く似ていなくて可笑しかったらしい。
身振り手振りを交えて話すものだから、わたしも想像して笑ってしまった。
「あははっ! 口癖はそのままなのに」
「そ。そのままなのに全然似てなくてさ。似てなくて面白かったんだよな」
「確かに、逆に面白いってあるよね」
思わず声を上げて笑ってしまったわたしは、恥ずかしくなって誤魔化すようにジュースを飲む。だけど誤魔化しだと野崎くんにはわかったみたいで、小さく笑われてしまった。
「はい、こんにちは」
突然現れた透矢くんのおばあさんに驚いたわたしだけど、野崎くんも焦っていた。
「な、何でこんなとこにいるんだよ、ばあちゃん!」
「たまには運動しないと、と思ってね。透矢ちゃんは出かけたから、のんびり歩いてたのよ」
「にしたって、駅の反対側までか……。ばあちゃん健脚だな」
「ふふ、ありがとう」
まんざらでもなさそうなおばあさんは、わたしの顔をじっと見て首をかしげる。
「あら、あなた……」
「あ、えっと……」
「ばあちゃん、クラスメイトの角田だよ。ばあちゃんを助けてくれた人捜しを手伝ってくれてるんだ」
思わず視線をさまよわせるわたしを、野崎くんが助けてくれる。紹介してもらって、わたしはようやく「クラスメイトの角田水月です」と名乗ることが出来た。
ほっとしたわたしを眺めて、おばあさんは「あらあら」と楽しそうに微笑んだ。
「あなたが水月ちゃんね。透矢ちゃんからお噂はかねがね」
「へ?」
「ばーちゃん!!」
頼むから、余計なことは言わないでくれ。顔を赤くして頼む野崎くんに、おばあさんは「わかってるわよぉ」とくすくす笑う。笑い方というか、表情が野崎くんとよく似ている。野崎くんが、おばあさんに似たのかな。
「そういえば、あなたたち何処かに行く途中だったんじゃない? 邪魔してしまったわね」
「いいえ、色々見ていただけなので……。大丈夫ですよ」
「ありがとう。それじゃあ、透矢ちゃん。ゆっくり帰ってきたら良いわ」
「ばあちゃん……。角田をそんなに連れ回せないよ。夕方には帰るから」
「ふふ、わかったわ。水月ちゃん、またね」
「あ、はい。また。お気をつけて」
野崎くんのおばあさんを見送って、角を曲がって見えなくなる。すると、野崎くんが大きく息を吐いた。
「はぁ……びっくりした……」
「本当に。でも、笑顔の素敵なおばあさんだね」
「へへ、ありがとな。ばあちゃんも喜ぶよ」
野崎くんのはにかんだ笑顔に、どきっとさせられる。彼はおばあさんが去った方をちらりと見てから、わたしに「行こうか」と促した。
「喉かわいてないか? 俺はかわいた」
「おばあさんに会っちゃったもんね。フードコートあるみたいだし、そこで休憩する?」
「賛成」
わたしたちは商業施設の四階にあるフードコートに入って、それぞれ飲み物を買った。自動販売機があったから、わたしはリンゴジュース、野崎くんは炭酸を買う。
「付き合ってくれてありがとな、角田」
無事に席を確保して、わたしたちは向かい合って座る。缶を開けて一口飲んだ後、野崎くんはそう言って笑った。
「何度も誘うのは迷惑かとも思ったんだけど……」
「そんなことないよ。野崎くんと遊ぶの楽しいから……。あ、勿論、人捜しもしないとなんだけど!」
「あはは。いいよ、それで。角田が楽しいって思ってくれるなら、誘ってよかったと思うし」
けらけら笑った野崎くんは、いつの間にか取っていた館内パンフレットをテーブルの上に広げる。覗き込むと、スルーしてきた三階や他の階にも色々なお店が入っていることがわかった。
「この後、どうする?」
「そう、だね……」
館内地図を眺めながら、今更わたしはドキドキしていた。これ、デートみたいじゃない?
(いやいや、うぬぼれたらダメだ。野崎くんは、あくまでおばあさんを助けた人を捜したい……んだよね?)
少しだけ、期待してしまう自分がいる。わたしを見る野崎くんの視線に、別の意味を探したくなる。でも、それはダメだと自分に言い聞かせる。
(出来るだけ、人が集まりそうなところが良いよね。聞き込みとか出来そうな……)
「あ、ここは?」
「どこ?」
考え込んでしまっていたわたしは、野崎くんの声に引き戻される。彼が指差す場所を見れば、そこには『イベントスペース』と書かれていた。
「イベントスペース……?」
「今は、『小さな水族館』っていう企画をやってるみたいだ。行ってみないか?」
「……うん、行きたい」
「じゃ、決定な」
柔らかく笑った野崎くんは、炭酸をペットボトル半分くらい飲んでいる。対するわたしは、リンゴジュースがまだ三分の二くらい残っていた。
「ごめん、早く飲むね」
「良いよ。急がなくても、水族館は逃げないから」
野崎くんはそう言って、青山くんと盛り上がった話題について話してくれる。どうやらクラスに先生のモノマネが得意な男子がいるらしく、彼を真似てモノマネをしてみたら、全く似ていなくて可笑しかったらしい。
身振り手振りを交えて話すものだから、わたしも想像して笑ってしまった。
「あははっ! 口癖はそのままなのに」
「そ。そのままなのに全然似てなくてさ。似てなくて面白かったんだよな」
「確かに、逆に面白いってあるよね」
思わず声を上げて笑ってしまったわたしは、恥ずかしくなって誤魔化すようにジュースを飲む。だけど誤魔化しだと野崎くんにはわかったみたいで、小さく笑われてしまった。
