蛍火のような恋だった



「あんなに楽しそうな顔、久しぶりに見た気がするよ」

「…そうね」

「きっと、いい友達に出逢えたんだな」

「きっとね…。今のあの子、今までで一番活き活きしてるもの。…この選択をして良かったって、今は心の底から思えるわ」

「…そうだな」

玄関に向かった私を見ながら、お母さんとお父さんが、そんな会話をしていることに気づかないまま、私は家を出た。

✳︎

たくさんの人が今日を心待ちにしていたのだろう。

お祭りが行われる場所に行く途中も、浴衣や甚平をきた若い人やカップル、親子連れやお年寄りまで、数えきれないくらいの人が自分と同じ方向に向かっていく。

待ち合わせの場所に近づくと、中島くんの姿が見えた。

いつもは制服姿の中島くんだけど、今日は初めて見る私服。

いつもとはまた違った雰囲気に、ドキドキが止まらない。

「中島くん」

声をかけると、中島くんは目を瞠って、なぜか固まっている。

視線の先は、私の浴衣。

「…あ、これねお母さんが着付けてくれたの。私浴衣って初めて着たんだけど…変、かな」

なんだか恥ずかしくて、私は浴衣の袖を掴んだ。

「……いや、違う…その…」

中島くんが、口元を手で覆う。耳まで、真っ赤になっていた。

「……すげー、可愛い…」

蚊の鳴くような声がした。

「ほんと?良かった」

私は小さく微笑み返す。

「…行こう」

「うん」

中島くんの横を一緒に歩き出す。