蛍火のような恋だった


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土曜日。

「浴衣、可愛いけどこんなにキツキツに帯締めるものなの?」

「浴衣はそういうものなの。ほら、いいわよ」

帯を整えて、お母さんが言う。

人生で初めて着る浴衣は動きにくかったけど、時間が経つとそれにも慣れてきた。

お母さんが昔着ていた、鮮やかな金魚柄の浴衣。

「蛍、よく似合ってるじゃないか!若い頃の母さんそっくりだ」

「ほんと、よく似合ってるわ」

二階から降りてきたお父さんが、「おお〜」と感嘆の声を漏らしている。

その隣で小さく頷くお母さん。

「馬子にも衣装でしょ?」

私がくるっと回ってみせると、2人は声をあげて笑った。

「あ、そろそろ時間だ。じゃあ、行ってきます!」

「気をつけていくのよ」

「はーい」

玄関に急ぐ私を、そっと見守るふたり。