蛍火のような恋だった


今日は、中島くんが私を家まで送ってくれた。

「…岸田の家、ここなんだ」

「うん。送ってくれてありがとう。ね、ずっと思ってたんだけど、世の恋人さんたちは、お互いを名前で呼び合うの?」

「……さあ」

私の問いに、中島くんは小さく肩をすくめる。

「うーん…ね、試しに呼んでみてよ。蛍って」

「…いや、俺女子のこと名前で呼び捨てしたことないし…」

中島くんは戸惑ったように、視線を泳がせる。

「じゃあ、私が呼んでみるから………凪くん」

少しだけ間が空いて、私は名前を口にする。

"凪くん" その4文字を言葉にするのは、自分が思っている以上に勇気が必要だった。

恥ずかしくて、くすぐったくて…

照れくささを隠そうと、平静を装って中島くんに笑顔を見せる。

「どう?やっぱり苗字と名前だと、違ってーーー」


その瞬間、私の腕を引いた中島くんが、首を傾けたかと思うと…


ふわりと、唇に何かがふれた。