蛍火のような恋だった



「…もう、びっくりした。でも、本当お腹気持ち悪くなったりしたらすぐに言ってね?」

私の言葉に、中島くんは再び頷く。


私はまたパンケーキを頬張って、「美味しい」と呟く。

こうやって過ごす時間はパンケーキに負けないくらい甘くて…

私にとっては、夢みたいな時間だった。


✳︎

「さすがに、お腹重たいかも」

夕日の中を私と中島がふたりならんで歩いて行く。

「女子ってみんな甘いもの好きなのか?」

「それは人それぞれだと思うけど…でも、私は甘いの大好き。今日のパンケーキ、今まで食べた物の中で1番美味しかった」

ふわふわして、とびっきり甘くて…まるで、本当に恋をしているみたいな気持ちになった気がする。

「私、恋人と一緒に、放課後にああやって出かけるとか、ずっと憧れてたんだ」

「…好きな奴できたら、そんなのこの先いくらでもできんだろ」

ちょっとだけ、低い声で言う中島くん。

「……うん、まあね」

ちょっとだけ、胸の中がざわめいて、ちくりと痛む。

「俺、だれとも付き合ったことないから、どんな感じとか、わかんねーし…」

「えっ、中島くんかっこいいから、誰かと付き合ったことあるのかと思ってた」

「…俺、かっこよくないよ」

「そんなことない。かっこいいよ、すごく」

私はそっと笑った。

サッカーをしてる姿も、時々見せる笑顔も、今みたいな澄んだ横顔も、全部かっこいいんだから…