「可愛い……」 ぽつり、と何か呟いた裕也の目を覚ますかのように、凪が背中をバシッと叩いた。 「いでっ!!」 我に返ったような裕也の声に少しびっくりして、私はパチパチと瞬きを繰り返す。 「…これ、君の傘。多分さっきの風で、傘の骨折れたかも」 「ありがとう。…あ、ほんとだ!」 差し出された傘を開くと、確かに骨組みのところが折れてしまっていた。 「この傘古いから、寿命だったのかも。とにかく、あなたたちにケガがなくて良かった」