蛍火のような恋だった


「…うん、私も同じ。ここに来ると、どんな憂いも風が空に運んでくれそうな気がする」

みんなそれぞれ悩んで、苦しんで、不安を抱えて…それでも1日1日を生きてる。

描いていた線が少しずれて、私はそれを消しゴムで修正する。

少しの沈黙が流れた後、先に口を開いたのは中島くんだった。

「岸田はさ、なんで絵を描こうと思ったの?」

「ただ、描くことが好きだから」

「そうじゃなくて。景色とか、綺麗だと思ったなら写真で残した方が早いだろ。絵だと、時間かかると思って」

私は目の前に広がる景色を見つめる。

「確かに、写真なら一瞬で残せるけど。絵は、時間をかけて、自分の手で描いていくでしょ?そうすれば、自分がたしかにここにいたって、思える気がするの」