蛍のお母さんの車に乗って着いたのは、蛍の家だった。
「遠慮しないで、上がって」
「お邪魔します」
初めて上がる、蛍の家。少し緊張しながら玄関を抜けると、案内されたのは明るいリビングだった。
リビングには、蛍の赤ちゃんの頃から最近の写真まで、いくつもの写真が飾ってある。
でも、視線はどうしてもそこに留まらなかった。胸の奥がぎゅっと痛む。
「どうぞ」
蛍のお母さんが、丁寧にお茶を差し出す。
「ねえ、凪くん。蛍のこと、思い出すと辛い?」
俺は視線を手元のお茶に落とし、しばらく言葉を探すように黙った。
やがて小さく息を吐いて、震える声で答えた。
「……はい」
目の前の写真を、どうしても直視できない。
心の中で、蛍の笑顔がふっと消えてしまいそうで、怖かった。
「そうね、私も辛いわ。でもね凪くん、凪くんには時間を進めていって欲しいの。もちろん、急がなくていい。ゆっくりでいいから」

