蛍火のような恋だった



いつ屋上を出たのかも、よく覚えていない。

俺はもぬけの殻になったように、校門までの道を歩いていると、「凪くん」と、聞き慣れた女性の声がした。

振り向けば、そこにいたのは蛍のお母さんだ。

「凪くん、久しぶりね」

「…こんにちは」

軽く会釈を返すと、蛍のお母さんは心配気な様子で俺を見つめる。

「凪くん、ちゃんとご飯食べてる?」

そういえば最近は食欲も湧かない。

空腹なんて感覚も、この頃は全く感じていない気がする。

「…あの、今日はなんで学校に?」

「色々落ち着いたから、学校に挨拶に来たの。ねえ凪くん、これから少し時間貰ってもいかしら」

この後は用事もないし、俺は「はい」と頷いた。