蛍火のような恋だった



9月も終わりを迎える頃には、蛍の病状はどんどん悪化していくばかりだった。

ここ数日間は薬の影響で、一日の大半を眠って過ごすような状況だ。

最後に声を聞いてから、もう何日も経っている。

「蛍、みんな来てくれてるのよ。目、覚ましたらどう?」

蛍のお母さんは、蛍の冷たい手足をさすりながら、蛍に声をかける。

「ちゃんと声は届いてるから、話しかけてあげて」

蛍のお母さんの言葉に、裕也も山田も、小さく頷く。

「蛍、文化祭ね私たちのクラス、お化け屋敷やることになったんだ。私、お化けの絵描く担当になったんだけど、全然ダメダメ。蛍がいたら、超クオリティー高いお化けの絵、描いてくれるでしょう?」

山田の声が、震えている。

「そうだよ。俺も凪たちのクラスの様子見に行ったけどさ、まじ彩綾ちゃんの、違う意味でクオリティー高すぎて、悪夢見そうなくらいひどい絵なんだ」

「ほんっと、あんたってムカつく…」

裕也は、何度も目を瞬いて、視界を晴らしているようだった。