「あの、蛍は」
「蛍、昨日の夜中に発作を起こして、しばらく意識が戻らなかったの。今日から、病棟の場所が変わったから、案内するわね」
きっと昨日からつきっきりで、蛍のそばにいたのだろう。
蛍のお母さんは疲れ切った様子だった。
体中から、体温が失われていく。
胸が、えぐられるように苦しい。
蛍の病気が、命の期限が嘘だったと錯覚し始めた頃に、こうやって現実に引き戻される。
1秒でも早く、蛍に会いたかった。
その温もりを、確かめたかった。
「この部屋よ。…私は待合室に戻ってるわね」
「ありがとうございます」
きっと蛍のお母さんは、気を利かせてくれたのだろう。

