蛍火のような恋だった


頑張って耐えた傷の痛みが蘇ってきそうで、私はその傷を隠すようにブラウスの上から手を置いた。

目を閉じて、指先に意識を集中する。

トクン、トクンと大きく、ゆっくりと刻む鼓動が指先に伝わってきた。

…大丈夫。まだ、ちゃんと頑張ってくれてる。

「君にはずいぶん振り回されてきたけど、この半年間だけは、私の好きにさせて欲しいな。だから、それまでもう少し頑張ってくれる?」

私は胸元に手を当てたまま、静かにひと刻みを打つ心臓に、そう語りかける。

生まれた時から、14年間、一緒に生きてきた存在。

5月が終わる頃、それもあと半年だと告げられた。