「どうぞ、お母様はこちらにお掛けください」
診察室は静まり返っていた。
医師がカルテを手に、少し言葉を選びながら話す。
「蛍さんの、心臓機能の検査結果ですが… 心臓の状態はかなり厳しくなっています」
そう言われることは、わかっていた。
自分の体のことなんて、自分が一番わかっている。
「今よりも心機能が低下すれば、今使っている症状を抑える薬だけでは、厳しい面も出てくる可能性が高いです。そういった面から考えて、緩和病棟の検討をされた方が良いかもしれません」
先生は言葉を続ける。
「緩和病棟に移れば、痛みに対する専門的な介入を受けながら、最期まですごすことが出来るかもしれません」
お医者さんからしても、その瞬間が早まっていると感じているのかもしれない。
「ご家族でよく相談して、決めてください」
先生はまっすぐにそう言い切った。

