蛍火のような恋だった

(蛍side)
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私が目を覚ましたのは、病院に運び込まれた次の日だった。

「おはよう、蛍ちゃん。今日の調子はどう?」

聞き慣れた看護師さんが入ってきて、私は開いていたスケッチブックを閉じた。

せっかく病院から離れた生活は、たった2ヶ月ちょっとで終わってしまった。

今はまた、顔見知りの看護師さんに囲まれて入院生活を送っている。

「調子は大丈夫です。でも、ちょっと酸素マスクが邪魔かなあ…って」

呼吸を安定させるための酸素マスクのゴム臭さが鼻をついて、あまりいい気分ではない。

「邪魔なのはわかるけど、呼吸状態があまりよくないから外すのはだめよ?でもマスクじゃなくて、カニューレタイプに変えられないか、先生に聞いてみるわね」

「ありがとう」

「お父さんとお母さんは?」

血圧計を私の腕に巻きながら、看護師が聞く。

「お医者さんと話してる」

「そう。血圧、ちょっと低いけどまあ大丈夫そうね。でもまだ状態安定してないから、無理は禁物ね」

「はあい」

「またお昼頃に計りにくるけど、もし何かあったらナースコールすぐ押してね」

私が頷くと、看護師さんは次の患者さんの部屋に入っていった。