蛍火のような恋だった



「だからこそ、凪くん。あの子が笑って過ごせる時間を、一緒に作って欲しいんだ」

目頭が、熱で熱くなる。

視界が、ぼんやりと揺れてきた。

どうしてなのだろう。


どうして、神様は蛍にばかりをこんな目に遭わせるのだろう。


俺の心臓を、蛍にあげられたら…

自分の無力さに、腹が立って仕方がない。

「泣かないって、決めてたんだけどなあ…。これから流す涙を、今日全部流しておかないとな」

蛍のお父さんが、唇を震わせて、必死に笑顔を作る。


涙を止めることなんか、できなかった。

蛍に時間がないことなんて、まだ受け入れられない。

受け入れたくもなかった。


それでも、ぼんやり揺れる視界の向こうで、蛍の笑顔を思い浮かべる。

その笑顔を守るためなら、どんな困難も受け入れられる――そう、心で思えた。